| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-219 (Poster presentation)
滞水により土壌の空隙が少なくなり酸素欠乏となると根からの酸素輸送が低下し、植物の生態機能に悪影響を起こす。滞水の長期化により植物の枯死率が増加することが知られている。しかし、ハンノキやヤナギなどの湿地植物には根が水につかっている状態でも通気組織の形成、不定根の発生などの何らかの形で酸素を吸収し、生態機能を維持している。
しかしどの機能が低下して植物全体の枯死に至るのか、またはどの機能が維持されて枯死回避の決め手になるのか明らかになっていない。そこで本研究では、滞水ストレスに強いハンノキを用いて、弱るまたは枯死回避するメカニズムを明らかにすることを目的とした。
山形大学農学部付属の苗畑を使用し、80本のハンノキを用い、滞水区・コントロール区に分けた。滞水処理はバケツにハンノキ苗を入れ、土壌が隠れるくらいに水量を維持した。それぞれの処理区から4個体ずつ選び、7月からの4ヶ月間で実験を行った。呼吸の測定はサンプル個体の葉、茎、根から一部をサンプリングしそれぞれ測定した。また、サンプルの根だけを容器内の水につけてDOの値の変化により水中での根の呼吸を測定し、空気中との呼吸の仕方に違いがあるのかを調べた。
実験により、イオン漏出の結果から滞水区のサンプルの根が30日頃には確実に弱っていることが分かった。滞水のストレスを直接受ける根から弱り、茎、葉と遠くなる程、影響を受けにくいことが分かった。しかし、水中での根の呼吸は両処理区に違いはなく、滞水区の呼吸に何かしらの適応があったと考えられる。また、根が弱ることで周りに十分な水が存在しても水分吸収の低下が起こり、地上部では気孔を閉じ、蒸散を防ぐことで、光合成は早期からできなくなってしまうが、その分個体の水分量を維持することができるため、枯死には至らなかったと考えられる。しかし、水分吸収が維持できなくなれば呼吸も低下し、枯死してしまうと考えられる。