| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-222  (Poster presentation)

中型食肉目の探索性に影響を与える人為的な要因:新奇物を用いた野外実験【A】
Anthropogenic factors affecting the exploration of medium-sized carnivores: a field experiment using a novel object【A】

*田中小百合, 斎藤昌幸(山形大学大学院)
*Sayuri TANAKA, Masayuki SAITO(Yamagata Univ.)

野生動物が人為的環境に出現する要因として、行動特性のひとつである探索性がかかわることが指摘されている。探索性は郊外個体群より都市個体群の探索性が高いことが報告されているが、環境傾度によって探索性がどのように変化するかは明らかになっていない。本研究では、中型食肉目のタヌキとキツネを対象に、農地や集落に近いほど探索性が高いかを明らかにする。
調査は2023年7月から11月に山形県庄内地方における46ヵ所の調査サイトで実施した。探索性は、高さ45 cmのカラーコーンを使用したNovel object test(新奇物反応調査)によって評価した。調査では、新奇物の提示前期間、提示期間、除去後期間をそれぞれ7日間設定した。新奇物は林道沿いに設置し、自動撮影カメラを用いて動物の行動を動画で撮影した。撮影された動画から、各出現において探索行動が確認されたかどうかを記録した。探索行動の定義は見る、嗅ぐ、掘る、マーキング、避ける、逃げるとした。ただし、タヌキに関しては通常時においても嗅ぐ行動をよく行うことから、探索行動から除外した。各観察期間において、各種の探索行動の観察の有無と集落および農地からの距離の関係を、回帰分析によって解析した。
 調査の結果、タヌキが323回、キツネが177回出現した。そのうち探索行動が観察された回数はタヌキが63回、キツネが44回であった。回帰分析の結果、タヌキでは新奇物の提示前期間に農地から近いほど、提示期間に農地から遠いほど探索行動をとる傾向があった。キツネでは、除去後期間に集落からの距離が遠いほど探索行動をとる傾向があった。傾向に違いはあるが、これら2種は集落や農地の近くでは探索行動をとらず、遠い場所で探索行動をとることが示された。これは集落や農地付近に出現する個体ほど、新奇な物や環境に関わる機会が多いためかもしれない。


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