| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-226  (Poster presentation)

庄内地方におけるムササビによるスギ人工林の利用:森林構造との関係【A】
Use of cedar plantations by the Japanese giant flying squirrel in the Shonai region: relationships with forest structure【A】

*宮原由紀, 斎藤昌幸(山形大学)
*Yuki MIYABARA, Masayuki SAITO(Yamagata Univ.)

 人工林は一般的に野生動物に対して負の影響をもたらす一方で、一部の野生動物は人工林を利用することがある。そのため、どのような人工林であればハビタットとして機能するのかを明らかにすることは重要である。人工林による負の影響を受けやすいと考えられる滑空性哺乳類であるムササビは、スギ人工林をしばしば利用するが、どういう人工林を選択するかは不明である。本研究では、冷温帯において森林構造や周辺環境がムササビのスギ人工林の利用に与える影響を明らかにすることを目的とした。
 調査は2023年8月から11月に山形県鶴岡市で行った。本研究では調査地域のスギ人工林に51プロットを設置した。ムササビの利用状況を把握するために、各プロット内においてムササビの痕跡(糞と枝上巣)の有無を記録した。また、森林構造としてプロット内の立木本数、胸高断面積合計(TBA)、開空度、樹洞の有無を、周辺環境として半径500 mのバッファ内に含まれる広葉樹林と針葉樹林の面積割合を算出した。ムササビの痕跡の有無を森林構造(立木本数、TBA、開空度、樹洞)、周辺環境(周辺広葉樹林率、周辺針葉樹林率)、調査地で説明する一般化線形モデル(GLM)によって解析した。また、AICにもとづくモデル選択もおこなった。
 調査の結果、16プロットでムササビの痕跡を発見した。モデル選択の結果、ベストモデルには立木本数、TBA、開空度、周辺針葉樹林率が選択された。ベストモデルの結果から、ムササビは立木本数が少なく、TBAが大きく、周辺針葉樹林率が高いスギ人工林を選択的に利用していた。この結果は、冷温帯においてムササビは、過密化していない成熟したスギ人工林を利用したことを示している。また、周辺に針葉樹林(すなわちスギ林)が多い場所の利用が多かったことは、冷温帯の冬期における休息場や餌資源の重要性の観点から説明することが可能かもしれない。


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