| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-227 (Poster presentation)
農地の耕作放棄による景観構造の変化に伴って農村の生物多様性が変化し続けている。景観構造の変化に対する生物の反応は食性等の機能によって異なり、特に分散能力は大きな要因となっている。そのため、農村における生物多様性の変化を予測するためには対象生物の機能を考慮する必要がある。本研究では長野県北安曇郡小谷村において耕作放棄の進行程度が異なる合計20集落を調査対象地とし、分散能力が異なる分類群として鳥類群集、チョウ類群集、地表徘徊性甲虫類群集、植物群集の種組成を集落間で比較することで、農村の景観構造の変化に伴う生物群集の種組成の変化が機能および分類群間で異なるのか検証した。
調査対象集落の景観構造の変化を明らかにするために、農業活動の最盛期である1950年代と現在の土地利用図を作成し、土地利用の比率や土地利用の多様性の変化を算出した。集落の生物群集の調査は2023年5月から9月にかけて分類群ごとに統一された方法で行った。景観構造の変化と生物群集の種組成の関係を明らかにするため、機能ごとの種数および個体数を景観構造の変化で説明するGLMMを行った。
1950年代から現在にかけて農地が大幅に減少し、土地利用の多様性が低下していることが明らかになった。これらの変化は主に生物群集の種数ではなく個体数を説明し、1950年代に比べて土地利用の多様性が低下しているほど、渡り性のある鳥類が増加し渡り性のない鳥類が減少すること、年一化性および広食性のチョウ類が増加すること、専食性および植食性の地表徘徊性甲虫類が減少することが示された。以上のことから、景観構造の変化は集落の生物群集に対して特定の機能を持つ種の個体数に影響することによって種組成を変化させること、その変化パターンは分類群によって異なることが示唆された。