| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-229  (Poster presentation)

都市緑地に生息する繁殖期鳥類相の長期的な変化:大阪における2000年と2022年の比較【A】【O】
Long-term change in breeding bird communities in urban green spaces: comparison between 2000 and 2022 in Osaka【A】【O】

*寺嶋建(大阪公立大学), 橋本啓史(名城大学), 吉川徹朗(大阪公立大学)
*Takeru TERASHIMA(Osaka Metropolitan Univ.), Hiroshi HASHIMOTO(Meijo Univ.), Tetsuro YOSHIKAWA(Osaka Metropolitan Univ.)

 都市における生物の分布と環境との関係性を明らかにすることは、都市での動物生態の解明につながり、また都市生態系の保全においても重要である。都市の生物群集は時代によって変化していることが知られており、生物種は都市環境に対する応答を変化させている可能性がある。このため都市におけるそれぞれの種の分布、およびそれと環境との関係は、長期的視点で解明することが重要である。
 本研究は大阪市周辺における都市緑地の鳥類群集とその長期変化の解明を目的とした。橋本ら(2003)により2000年繁殖期に鳥類センサスが行われた84緑地を含む120緑地について、2022年の繁殖期に同様の調査を行なった。鳥類相と都市環境の関係性の分析では、まず緑地の環境要因として緑被量に着目し、これと各鳥類の生息との関係を探った。次に緑地周辺の環境の影響も考慮するため、緑地環境に加えて、緑地からの様々な距離のバッファ内における環境要因も説明変数とし、各鳥種の在不在を応答変数とする一般化線形モデルを構築した。その後モデル選択により各鳥類が最も影響を受けている環境要因とその空間スケールを検討した。
 調査の結果、22年間で鳥類群集に大きな変化が見られた。2000年と2022年の双方で調査が行われた緑地についてみると、ハシブトガラスやシジュウカラは生息緑地数が大きく増加したが、メジロは大きく減少した。2022年ではシジュウカラは緑被量がより少ない緑地でも生息するようになり、メジロは緑被量が大きい緑地でしか生息しなくなっていた。一般化線形モデルでは生息に最も影響を与える環境要因や影響を受ける空間スケールは鳥種ごとに異なることが示された。さらに同じ種でも2000年と2022年で生息の決定要因が異なるという結果が得られた。このことは都市環境に対する鳥類の応答が22年間で大きく変化していることを示唆している。


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