| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-230 (Poster presentation)
生物多様性保全において湿地は重要な役割を担っている.しかし,その面積は全国的に大幅に減少しているため,湿地生態系の保全と再生が求められている.植物を保全することは湿地生態系を保全する上で不可欠だと考えられている.また,圃場整備事業が制度化された1960年代半ば頃まで水田は湿地の代替として機能していた.しかし,除草剤の普及や乾田化,耕作放棄地の増加により,現在の水田は湿生植物の生育地として十分機能していない.一方で,ビオトープとして管理を行えば植物を含む様々な分類群に対する保全効果があることが報告されている.コウノトリの野生復帰事業の中心地である兵庫県豊岡市は,コウノトリの採餌場所として利用できる湿地環境の創出のため,耕作放棄地や休耕田を活用した水田ビオトープが多数設置されている.これらの水田ビオトープは水生動物の生息場となることが意図されているが,湿生植物の生育地としての機能も期待される.
そこで,本研究では植物群集をもとに水田ビオトープの類型化を目的に調査を行った.豊岡市域に設置された管理方法や周辺環境が異なる水田ビオトープ24ヵ所を選定し,2022年初夏(6~7月)と秋(9~10月)に水田ビオトープの畦畔と圃場内を踏査し,出現する維管束植物を記録した.出現種の在不在データを作成し,統計解析ソフトR ver.4.3.1を用いて調査地ごとに確認された植物群集の類似度(Jaccard指数)にもとづき,調査地点を序列化(NMDS)した.次にK-means法による非階層的クラスター分析を異なる分割数で行い,Calinski-Harabaszの基準の増加状況により最適な分割数を判断した.最適な分割数においてINSPAN分析による指標指数を算出し,各クラスターの指標種を検出した.その結果,畦畔はグループ数3つ,圃場内は4つが最適だと考えられ,各グループを特徴づける指標種が確認された.