| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-232  (Poster presentation)

シカ採食圧による草原景観の変化はノウサギの生息地利用に影響を及ぼすのか【A】【O】
Dose changing grassland landscape by sika deer browsing affect habitat use of Japanese hare?【A】【O】

*末永雄貴, 布野隆之, 内藤和明(兵庫県立大・地域資源)
*Yuki SUENAGA, Takayuki FUNO, Kazuaki NAITO(RRM, University of Hyogo)

近年,ニホンジカ(Cervus nippon,以下シカと省略)の生息密度上昇による生態系への影響が危惧されている.その一つとして,シカの採食圧や踏圧,掘り起こしなどが植生を衰退させるといった事例が全国各地で報告されている.また,植生の衰退が生息環境を悪化させるとして,昆虫類や鳥類に及ぼす間接的な影響についても調べられている.その一方で,シカと同じく餌資源の豊富な草原環境を好むニホンノウサギ(Lepus brachyurus,以下ノウサギと省略)にどのような影響があるかはあまり調べられていない.そこで,本研究ではシカ採食圧により草原植生が衰退している二次草原において,ノウサギの生息地利用について調査した.
調査地は兵庫県扇ノ山山系に位置する上山高原である.上山高原で実施されている草原の管理方針(火入れ区,放牧区,草刈り区,火入れ+放牧区,火入れ+草刈り区,非管理区)に合わせてノウサギの生息環境を区分した.また,同一の管理方針でもシカ採食圧が低い場所と顕著に現れている場所で草原植生が大きく異なるため,それらを考慮し合計9タイプに区分した.調査は5〜11月の間毎月実施し,1ヶ月毎に蓄積されたノウサギとシカの糞粒数及び植生情報について記録した.また本調査地では2016~2020年の間,先行研究によって糞粒調査が実施されているため,それと合わせて生息地利用について評価した.その結果,現在はシカが調査地全体を高頻度で利用しているのに対し,ノウサギの生息地利用は低頻度で季節的に異なる場所を選択していることが示唆された.また,長期的に見ると,シカ増加前は多様な草原管理がノウサギの生息地利用に寄与していたが,シカが増加した現在では同一の管理を実施しても,かつてほどの利用頻度まで回復していない.このことから,シカ採食圧による草原景観の変化はノウサギにとっての利用価値を低下させていることが示唆された.


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