| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-236 (Poster presentation)
火山荒廃地における土壌生成の研究は、生態系破壊からの早期回復や緑化技術の開発において重要である。三宅島では2000年噴火時の降灰や火山ガスの影響程度により、植生回復段階の異なる地点が見られ、植生遷移と土壌発達の関係に着目した研究が可能である。本研究は、比重分画法および非破壊分析手法を用いて表層土壌の土壌構造と土壌有機物の特徴を明らかにし、三宅島2000年噴火後の植生回復と表層土壌の発達の関係を考察した。
三宅島の火山灰堆積地域に設定された固定調査区から選定した3地点(草原1:ハチジョウススキ草原、森林1:オオバヤシャブシ低木林、森林2:オオバヤシャブシ-タブノキ林)および、噴火被害をほぼ受けていない1地点(森林3:スダジイ林)計4地点で表層土壌試料を採取した。比重1.6 g cm-3の重液を用いて比重分画を行い、植物残渣などが主体の軽比重画分(LF)と鉱物と相互作用している有機物を含む鉱物主体の画分(HF)に分画した。回収したLFは、分解程度を評価するために5つのサイズに分画した。分画前後の試料は、有機炭素量(TOC)、全窒素量(TN)、可溶性Al、Fe、Siを測定した。さらに森林1に特徴的に分布していた土壌動物由来の粒状構造に着目し、表層土壌および土壌構造中のTOC、TN、粒状構造のµX線CT分析を行った。また粒状構造から採取した<2 µmサイズ粒子の炭素分布および炭素官能基組成の測定を走査型透過軟X 線顕微鏡(STXM)を用いたX線吸収微細構造(NEXAFS)分析により行った。
その結果、草本植生から窒素固定能を持つオオバヤシャブシなどから構成される森林環境へ遷移する過程における土壌生成は、①草本植生下で蓄積した植物残渣が細分化するとともに減少すること、②土壌動物による攪乱が生じ、土壌構造の発達と土壌有機物の蓄積が進行すること、③粒状構造内で微小なLFとともに鉱物が混ざり合い、有機無機相互作用が進行していく可能性が示唆された。