| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-237  (Poster presentation)

リモートセンシング技術を使った春日山原始林の巨木の動態評価【A】【O】
Using remote sensing technology to assess the dynamics of huge trees in Kasugayama premeval forest.【A】【O】

*鳥羽生真, 竹重龍一, 大西信徳, 小野田雄介(京大・森林生態)
*Ikuma TOBA, Ryuichi TAKESHIGE, Masanori ONISHI, Yusuke ONODA(Forest Ecology Kyoto U)

春日山原始林には1000年以上に渡る禁伐によって、都市近郊にありながらも原生林が広がり、国の天然記念物にも指定されている。しかし、台風や虫害による巨木の枯死と、増加したシカによる実生の採食が森林更新を妨げ、その衰退が危惧されている。春日山では巨木の衰退を裏付けうる研究として航空写真を用いた樹冠ギャップの変化を評価する研究があるが、ギャップ判別は容易ではなく、結果の再現性に課題がある。また巨木個体を訪れ個体の健全度を評価する試みもされていたが、指標自体が主観的・定性的であった。本研究では、LiDARを用いて春日山のギャップと巨木の健全度を客観的に評価することを目指す。LiDARを用いると植生高を正確に評価できるため、客観的なギャップ評価が可能である。またLiDARからは樹木の葉群分布情報を取得できるが、この情報を用いれば健全度の客観的評価が可能になると考えた。解析には、2017年に行われた全域(250ha)の航空機測量のデータと、2023年に我々が行ったドローン測量のデータ(89ha)を使用した。各年の樹冠高地図を作成し、樹高5m以下の場所をギャップと定義した上で、ギャップの個数、密度、面積の中央値、面積の標準偏差を比較した。2017・23年で共通するギャップについては、面積の変化率も計算した。また2012年に健全度が記録された個体を再訪し、健全度とドローン画像上での樹冠位置を記録した。樹冠ごとに2023年の点群データを抽出し、高さごとの点群密度から葉群分布指標を計算した。調査範囲のギャップは6年間で0.27%から1.56%に増加した。ギャップの個数と密度は4.5倍に増加し、既存ギャップも1.8倍に拡大していた。健全度調査では、79個体のうち14個が枯死し、25個の健全度が低下していた。樹冠表面からの距離に応じた葉群分布のヒストグラムは、目視の健全度ランキングと一致した。これまでの主観的な方法に代わり、広域でギャップ動態や樹木の健全度を客観的に評価できる可能性が示された。


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