| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-241 (Poster presentation)
地球温暖化による気温上昇は、積雪量や積雪期間に影響を与えている。積雪は地表面ヘの断熱効果があることなど、環境要因や生物要因に変化を与える要因となることから、落葉や材といった新鮮有機物の分解に影響を与えると考えられる。しかし、日本の日本海側のような比較的温暖で多雪な地域での研究例は少ないため、このような地域での有機物分解に対する積雪の影響は不明である。そこで、本研究では有機物の分解者である菌類や細菌類に着目し、積雪前後での分解者微生物の群集構造の変化と、その制御要因について明らかにすることを目的とした。調査地は、群馬県利根郡みなかみ町にある日本大学水上演習林の標高860mと、新潟県南魚沼郡湯沢町にある苗場国有林の標高550m・900m・1500mの4試験地である。ブナ落葉5gと角材40gを目の粗さが50μmのメッシュバックにそれぞれ入れ、2021年の春に設置し、2021年の秋、2022年の春に回収した。試験地から回収した落葉と材サンプルは生重を測定した後に、凍結乾燥して乾燥重量を測定した。分解期間と重量変化から分解速度を調べた。乾燥させたサンプルを粉砕しDNAを抽出した。定量PCR法を用いて菌類と細菌類のDNAのコピー数を測定した。アンプリコンシーケンスによって菌類と細菌類のOTU数と相対優占度を求め群集構造を調べた。積雪は分解者である菌類や細菌類に影響を与えたが、影響の大きさは有機物によって異なった。DNAコピー数では、落葉では積雪後に細菌類が増加したが、材では菌類が減少した。これは、基質の違いが微生物の群集構造や積雪への応答に影響したためだと考えられた。菌類のOTU数は減少する傾向にあったことや、材でカビの相対優占度が減少していたことから、積雪下の環境に適応できない特定の菌類が存在することが示唆された。