| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-242 (Poster presentation)
材器官は森林の現存量の9割以上に達し、森林の炭素貯留において主要な役割を担う。材の分解による炭素損失を明らかにするためには、枯死材の分解速度やその制御要因について明らかにする必要がある。本研究では、スギ材を異なる深さに設置する実験と、丸太、枝、根、丸太を粉砕して成形した疑似材を地中に設置する実験を行い、設置場所と基質の違いがスギ材の分解速度に与える影響について調べた。
調査地は、群馬県の日本大学水上演習林である。スギの丸太、枝、根、疑似材の4種類をリターバッグに入れたものを丸太は90個、枝、根、疑似材は30個ずつ用意し、2016年11月に設置した。サンプルは設置から0.5、1、2、4年後にそれぞれ5反復で回収し、重量減少率、含水比、呼吸速度、分解速度、菌類・細菌類のDNAコピー数、炭素・窒素濃度、灰分を調べた。
丸太の重量減少率は深さによって有意に異なった。4年間で重量減少率が最も大きかった深さは地下5~10cmであった。線形モデル解析より、丸太の設置深さによる重量減少率のばらつきは、呼吸速度、含水比、菌類DNAコピー数、灰分濃度により説明され、地下5~10cmでの分解の促進要因は含水比の高さとそれに付随する生物要因の増加によると考えられた。地下5~10cmにおける重量減少率は基質によって有意に異なった。4年間で重量減少率が最も大きかったのは疑似材で、根と枝は同程度、丸太は最も小さかった。疑似材を除く基質ごとの重量減少率のばらつきは、窒素濃度、菌類DNAコピー数、灰分濃度により説明され、分解速度が窒素濃度と灰分濃度、菌類の現存量によって制御されることが明らかになった。これらの結果より、枯死木の分解速度の制御要因として生物要因も重要であることが示された。