| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-246  (Poster presentation)

広葉樹木質リターの初期分解過程における各種要因の影響【A】
The effect of various factors on the initial decomposition process of broadleaf woody litter【A】

*根本和明(日本大学), 鈴木和馬(日本大学), 上村真由子(日本大学), 酒井佳美(森林総研), 橋本徹(森林総研), 野口享太郎(森林総研), 徳地直子(京都大学), 鵜川信(鹿児島大学)
*Kazuaki NEMOTO(Nihon Univ.), Kazuma SUZUKI(Nihon Univ.), Mayuko JOMURA(Nihon Univ.), Yoshimi SAKAI(FFPRI), Toru HASHIMOTO(FFPRI), Kyotaro NOGUCHI(FFPRI), Naoko TOKUCHI(Kyoto Univ.), Shin UGAWA(Kagoshima Univ.)

枯死木は、森林生態系の生物多様性の場、あるいは炭素貯留の場として重要な役割を担っている。枯死木の炭素貯留機能を知るためには分解速度の定量が必要となる。日本の森林の4割は針葉樹の人工林であるが、残りは広葉樹の天然林となっている。針葉樹の分解速度については研究例も多く、広域での評価も行われているが、広葉樹については報告が少ない。本研究では、地表と地中における広葉樹材の分解速度とその制御要因について調べた。
調査地は、札幌、標茶、盛岡、水上、芦生、熊本、鹿児島の7か所である。サンプルは、ミズナラ、ブナ、コナラとし、試験地に優占する樹種をそれぞれ設置した(ミズナラ:標茶、札幌、水上、ブナ:盛岡、水上、芦生、コナラ:水上、熊本、鹿児島)。水上試験地では、樹種の比較を行うためにすべての樹種を設置した。サンプルは、2×2×20cmの角材で、リターバッグに入れたものを33個ずつ用意し、調査地の地表と地中5~10cmの深さに2022年10月から2023年1月に設置した。リターバッグは、設置から0.5年と1年後に5個ずつ回収し、重量減少率、含水比、分解定数、菌類・細菌類のDNAコピー数、菌類細菌比を調べた。
分解定数は、地表で0.036~0.250/年、地中で0.002~0.720/年となった。既往の研究による針葉樹5種の倒木や根株の分解定数は0.020~0.059/年の範囲にあり、水上試験地の地中のコナラが0.002/年と非常に小さいことを除けば、広葉樹は針葉樹よりも分解が速いことが示された。樹種ごとに行った線形モデル解析より、地表では、積算気温や積算降水量、含水比といった環境要因の重要性が示された。一方で地中では、すべての樹種で菌類や細菌のDNAコピー数が選択され、環境要因とともに生物要因も制限要因として重要であることが示された。


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