| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-247 (Poster presentation)
CH4は重要な温室効果ガスとして知られているが, 現在の大気中CH4濃度は温暖化が最も進むシナリオであるRCP8.5の予測値に近い形で上昇しており2℃目標を達成しない限りは上昇し続けると予想されている。CH4は好気性土壌でCH4酸化菌によって吸収され(Le Mer and Roger, 2001), 特に温帯林土壌は重要なメタン吸収源であること報告されている(Feng et al, 2023)が、大気中CH4濃度の変化に対するCH4吸収能の応答の理解は不足している。本研究では土壌培養実験において、バイアル中のCH4濃度と培養温度を変化させることで、CH4濃度と気温が土壌のCH4吸収能に与える影響を分離して評価することを目的とした。土壌の採取は滋賀県南部に位置する温帯ヒノキ林(桐生水文試験地)で2023年の6月, 9月, 11月の3回に分けて行った。土壌は表面の有機物を取り除いた後にA層とB層に分けて採取した. 採取した土を風乾せずに2mmの篩にかけて根などの粗大な有機物を取り除き, 10gの土を50mlのバイアル瓶にいれて、ヘッドスペースをメタン濃度が既知のガス(2ないし10 ppm)で置換し、15ないし25℃で培養した。24時間おきにヘッドスペースの空気をシリンジで採取し、CH4濃度をCH4/CO2/H2O Trace Gas Analyzer (LI-7810, LI-COR Inc.)で測定した。バイアル瓶内のCH4濃度は24時間で大きく減少し, CH4酸化は24時間で急激に反応が進行した。 CH4濃度の変化量を単位時間と乾燥土壌重量で割ることでCH4吸収速度を算出した結果、培養開始時のヘッドスペースのCH4濃度が大きいほどCH4吸収速度は大きくなり, その増加率には採取した土壌ごとに大きなばらつきがみられた。温度についてはA層では温度が高いほどCH4吸収が活発になったがB層では変化がみられなかった。