| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-248  (Poster presentation)

有機物分解初期における窒素固定の可能性【A】【O】
Possible nitrogen fixation in early stages of organic matter decomposition【A】【O】

*杉浦和音, 畑中朋子, 吉田磨, 保原達(酪農学園大学)
*Aine SUGIURA, Tomoko HATANAKA, Osamu YOSHIDA, Satoru HOBARA(Rakuno Gakuen University)

 土壌表層のリター分解においては、初期に窒素の純増がしばしば見られるが、これは周囲の土壌窒素(特にアンモニア態窒素)の不動化によるとされている。一方で、こうした窒素増加の一因として窒素固定の可能性も考えられる。例えば、スギ落葉や広葉樹二次林のA₀層上部では落葉分解時の窒素固定活性が確認されている。しかし、窒素固定が有機物分解時に行われているのかというのは分かっていない。そこで本研究では、窒素が純増する現象において窒素固定が寄与しているのかを明らかにすることを目的とし、土壌培養実験を実施した。培養実験は、ガラスビーカー内に土壌を入れ、グルコースやセルロースなどを含め計4種類の有機物源や窒素源を添加して行い、有機物分解過程におけるビーカー内の炭素および窒素の増減を調べた。その結果、培養期間中の全炭素量は培養初期で大幅に減少後、徐々に減少する動きがみられた。一方、全窒素量は培養初期で減少後、増加する傾向がみられ、これらの傾向がすべての有機物源の場合においてみられた。今回、大気中以外の周囲から窒素が流入しない環境で全炭素量は減少していたが、全窒素量は一度減少後増加していたことから、有機物分解時に窒素固定が生じていたことが考えられる。また、窒素添加より無添加の方が最終日の窒素の残存率が高く、これには窒素固定細菌の特性が関係している可能性がある。これらの細菌は関連する酵素の生合成を調節する遺伝的調節機構を持っているため、アンモニア含有培地より無い培地の方で活性が高くなる特性を持っている。そのため、窒素添加より無添加で窒素が多くなったのはこの機構の影響ではないかと考えられる。このように、本研究では有機物分解初期に窒素固定が行われている可能性が示唆された。


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