| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-249  (Poster presentation)

カブトムシ幼虫がリター分解に及ぼす直接的効果および間接的効果【A】【O】
Direct and Indirect Effects on Litter Decomposition by Larvae of a Japanese Beetle【A】【O】

*飯島涼, 関川清広, 友常満利(玉川大・院・農)
*Ryo IIJIMA, Seikou SEKIKAWA, Mitsutoshi TOMOTSUNE(Tamagawa Univ.)

陸上生態系におけるリター分解は,リターの質,分解者生物の群集特性,気候や土壌などの環境によって制御される.これらのうちリターの質は分解過程に影響をもち,さらにリター食者(土壌動物)はリター分解を大きく左右する.リター食者による効果には,摂食,消化を通してリターが質的に改変される直接的効果と,その結果土壌微生物による分解速度(微生物活性)が増加する間接的効果がある.
 本研究は,葉リターの分解に対するカブトムシ幼虫(以下,幼虫)の直接的効果および間接的効果を明らかにすることを目的とし,飼育実験を行い,以下のようにリター分解特性を評価した.幼虫の摂食特性として,採取した葉リターを分解程度が低い未分解葉リターと分解程度が高い破砕葉リターに分け,それぞれに対する幼虫の摂食速度を比較した.幼虫排出物(糞)の分解特性として,糞と葉リターを培養し,土壌微生物の呼吸活性を測定した(マイクロコズム実験).
 飼育実験の結果,幼虫は破砕リターよりも未分解リターを選択的に摂食する傾向が認められた.破砕リターより未分解リターの方が有意に高い炭素含有率を示し(p<0.05),幼虫は炭素源として未分解リターをより選択していることが示唆された.マイクロコズム実験の結果,微生物呼吸は糞の方がやや高いものの,葉リターのそれと同程度であり(p>0.05),これら2種類の有機物資源は微生物活性に影響をもたないことが示唆された.
 本実験の結果,カブトムシ幼虫がリターの初期分解に及ぼす寄与は小さいことが明らかになった.しかし,生態系スケールの寄与や長期的な寄与ついては不明である.今後,カブトムシ幼虫の糞の微生物相(消化管内微生物相および土壌微生物相)や化学性,長期的な分解特性についても明らかにすることで,生態系のリター分解に及ぼすリター食者の腐食連鎖への影響をより具体的に解明できると考えられる.


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