| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-253 (Poster presentation)
細根は直径2 mm以下の非木質の根として定義される。細根の年生産量は陸上生態系における純一次生産量の33〜75%を占めることが報告されており、その正確な定量や変動要因の解明は将来的な生態系の炭素循環の解明において重要である。しかし、地上部生産量に比べ細根生産量に関する研究は少なく、研究間で計測手法や計測期間が異なることから細根生産量が森林タイプでどの程度異なるのか、気温や降水量などの環境要因や林齢や樹種多様性などの林分要因によってどの程度変動するのか正確にはわかっていない。そこで本研究ではイングロースコア法に統一して日本全国の森林を対象に細根生産量の測定を行い、森林タイプや環境要因、林分要因が細根生産量に及ぼす影響を評価することを目的とした。この目的のために、常緑針葉樹林(ヒノキ林)、落葉針葉樹林(カラマツ林)、常緑広葉樹林、落葉広葉樹林の4つの森林タイプで調査を行った。各森林タイプにおいて、日本全国に4つの調査プロット(計16プロット)設置した。各プロットに深さ30 cmのイングロースコアを埋設した後、1年間野外培養した。その後コアから細根を採取し、その乾燥重量を細根生産量(g m-2 yr-1)とした。各プロットで気象環境要因として年平均気温、年降水量のデータを収集し、土壌環境要因として深さ30 cmの土壌の容積重、窒素濃度、炭素濃度、CN比を測定した。林分要因としては胸高断面積合計、立木密度、樹木種数、林齢を測定した。なお林齢は文献値等を使用した。このデータを元に、まず森林タイプ間で細根生産量に違いがあるかを検証するため、分散分析(ANOVA)を行う。次に、環境要因と林分要因が細根生産量に及ぼす影響を評価するため、細根生産量を目的変数、環境要因と林分要因を説明変数として線形回帰分析を行う。これらにより、全国スケールで細根生産量に最も影響を及ぼす要因を明らかにする。