| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-254  (Poster presentation)

火山灰加入程度の異なる2つの森林における樹木のリン獲得様式の違い【A】
Differentiation of tree phosphorus acquisition strategies among two forests on volcanic soils and on non-volcanic soils【A】

*古田優希, 向井真那(山梨大学)
*Yuki FURUTA, Mana MUKAI(University of Yamanashi)

 日本の森林に広く分布する火山灰土壌の主成分である非晶質鉱物は、土壌中のリン酸イオンと強く吸着するが、樹木細根から分泌される有機酸によって遊離し可給態リンとなる。また、火山灰土壌で豊富な有機物由来の有機態リンは細根からのホスファターゼによって加水分解され、可給態リンとなる。しかし、火山灰土壌でどちらのリン獲得様式が卓越するのかは明らかではない。本研究では、樹木細根の根圏に着目し、火山灰の加入程度が異なる2つの森林を比較して、火山灰土壌における樹木のリン獲得戦略を明らかにすることを目的とした。
 火山灰土壌として⼭梨県の櫛形山、非火山灰土壌として滋賀県の霊仙山を調査地とし、各森林で共通する3樹種(ヒノキ、ミズナラ、コナラ)を各樹種4個体ずつ選定した。各個体で樹木細根のリン獲得形質(ホスファターゼ活性、有機酸分泌速度、全有機炭素分泌速度)および細根リン吸収速度を測定した。また、各個体から根圏土壌と非根圏土壌を採取し、リン画分濃度(非晶質鉱物吸着リン、可給態リン、全リン)、土壌ホスファターゼ活性を測定した。
 樹木細根のリン獲得形質と細根リン吸収速度はサイト間で差がなかった。土壌理化学性では、火山灰土壌の根圏で非晶質鉱物吸着リンは低く、可給態リン・全リン・土壌ホスファターゼ活性は高くなったが、非火山灰土壌では変化は見られなかった。また、火山灰土壌では細根リン吸収速度と細根ホスファターゼ活性に、非火山灰土壌では細根リン吸収速度と細根全有機炭素分泌速度に有意な正の相関関係が見られた。火山灰土壌の樹木は細根からのホスファターゼ活性を高めて有機態リンを獲得すると同時に、細根から分泌される有機酸の間接的な影響を受けて可溶化した非晶質鉱物吸着リンを利用することでリン吸収速度を維持していると考えられる。非火山灰土壌の樹木は、根から分泌される糖・アミノ酸などが根圏の土壌微生物を活性化しリンの無機化が促されるが、根圏効果には反映されないことが示された。


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