| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-259 (Poster presentation)
生物由来の有機物残渣を比較的低温かつ低酸素条件で炭化させたものであるバイオチャーは、分解が遅く、散布しても長期間土壌中に存在することから炭素隔離に有用である。しかし、バイオチャー自体の分解についての研究は少なく、それらは農地や室内での実験に限られるため、面積的にも大きく重要な炭素吸収源である森林生態系での知見はほとんどない。そこで、本研究では森林でのバイオチャーの分解を経路ごとに定量化することに加え、日本を代表する落葉広葉樹林のコナラ、常緑針葉樹林のアカマツ、人工林のスギの3林分で実験を行い、林分ごとの分解能を比較することを目的とした。
関東近郊のコナラ、アカマツ、スギ林を利用し、2023年夏から5か月間調査を行った。本研究では、各林分においてその樹種のウッドチップ(W)とそこから作成したバイオチャー(B)、共通の市販バイオチャー(S)の3種のサンプルを用いて、全体の分解量を重量減少で測定し、その内訳として無機化と溶出の2経路に注目した。重量減少はリターバッグ法、無機化量は通気法を用いて測定し、溶出については林内雨に溶け出すDOC(溶存態有機炭素)量を測定した。
重量減少の結果より、分解速度が極めて遅いため、土壌やリター由来の有機物が吸着したことや、菌糸などの付着の影響と考えられる重量増加が起きた。経路ごとに注目すると、BやSの無機化量が初期段階において多いことが分かった。また、BやWからの溶出量は時間経過に伴い減少した。しかし、上述のバイオチャー自身の有機物吸着により、重量減少は過小評価、無機化量は過大評価されている可能性があるため、今後は室内での吸着実験などを併用していく必要がある。林分ごとの分解能に関しては、1~5か月目の重量減少の月平均に注目すると、スギ林>アカマツ林>コナラ林の順で有意に分解量が多く、高い含水率に依存するものだと考えられた。