| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-261 (Poster presentation)
森林生態系は地球温暖化の原因となる大気CO₂の吸収源として機能している.都市圏には,小規模な様々なタイプの林分からなる緑地(里山林)が残されているが,エネルギー源の変化や木材需要の低下にともない放棄され,生態系機能の低下が危ぶまれている.本研究では玉川学園キャンパスを例に,都市域に残された緑地の現状を樹木地上部の炭素吸収量 (純一次生産量) から評価することを目的とした.調査地は東京都町田市に位置する緑地で,これらを7つの林分タイプに区分した;クヌギ・コナラ(管理),コナラ(非管理),コナラ・シラカシ(非管理),スギ(植林),ヒノキ(植林),クスノキ(植栽),モウソウチク(竹林).各林分にコドラート(20 m×20 m)を設置し, 毎木調査とリタートラップ法により2022年から2023年の単位面積当たりの樹木地上部の純一次生産量の推定を行った.その結果,純一次生産量は,クスノキ(植栽)が最も高く,次いでスギ(植林),ヒノキ(植林)となった.また,吸収された炭素の幹および葉への分配比率は,林分タイプによって異なる傾向が観察された.これらの結果は,植栽や植林など人為的に植えられた林分タイプの方が炭素吸収能は高く,半自然林においては管理の有無が炭素吸収能を回復させることを示している.都市域に残された里山林の機能を向上させるためには,林分タイプの転換や管理作業が重要な要素となると考えられた.