| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-264  (Poster presentation)

暖温帯コナラ林におけるバイオチャー散布に伴う土壌の一般理化学性の経年変化【A】【O】
Long-term changes in soil physicochemical properties by biochar application in a warm-temperate oak forest.【A】【O】

*内田理沙(神戸大学), 藤崎綾音(神戸大学), 鈴木武志(神戸大学), 飯村康夫(滋賀県立大学), 大塚俊之(岐阜大学), 近藤美由紀(国立環境研究所), 吉竹晋平(早稲田大学), 藤嶽暢英(神戸大学)
*Risa UCHIDA(Kobe Univ.), Ayane FUJISAKI(Kobe Univ.), Takeshi SUZUKI(Kobe Univ.), Yasuo IIMURA(Univ. Shiga Pref.), Toshiyuki OTSUKA(Gifu Univ.), Miyuki KONDO(Natl. Inst. Environ. Stud.), Shinpei YOSHITAKE(Waseda Univ.), Nobuhide FUJITAKE(Kobe Univ.)

 有機物を低酸素条件下で焼成して得られるバイオチャーは、難分解性有機物であるため農耕地への施用による炭素隔離効果を期待して温暖化対策のひとつとして盛んに研究されている。ところがその一方で、里山等の林地へのバイオチャー施用に関する情報は少ない。また、バイオチャー施用後の土壌の一般理化学性に関する中長期的な経年変化を調査した研究はほとんど無い。演者らは、2015年から埼玉県本庄市の里山林にバイオチャー施用試験区を設け、施用による土壌や森林バイオマスに対する経年的な影響を多角的に調査してきた。本報告では、土壌の一般理化学性の中長期的な変化について報告する。
 埼玉県本庄市にあるコナラ林内に2015年に20m×20m、2019年に2m×2m、2022年に5m×10mの試験区を設け、バイオチャー10 t ha-1を施用した(C10区)。バイオチャーの施用はリターの上に散布する方法をとった。また、無処理区としてC0区を用意した。これらの処理区において軽く踏圧をかけてO層を含む0-5 cm深の土壌を円筒コアで採取した。5cmコアの試料を手作業でO層とA層に分け、それぞれ容積重、pH、 CEC、交換性陽イオン量、塩基飽和度、全窒素量、全炭素量、C/N比、可給態リン酸を測定した。
 O層のpH(H2O)とC/N比はバイオチャー施用で有意に上昇し、経年に伴い減少する傾向を示した。またA層のC/N比の値は経年に伴い有意に上昇した。さらに全炭素量はバイオチャー施用から7年経過後、O層では減少し、A層では増加する傾向を示した。その他の項目 (A層のpH、O層およびA層の容積重、CEC、交換性陽イオン量、塩基飽和度、全窒素量、可給態リン酸) に変化は見られなかった。
 以上の結果から、暖温帯コナラ林へのバイオチャー施用はこれら土壌の一般理化学性に特に影響を及ぼさないことが示唆された。また、7年間でバイオチャーはO層からA層へと移動したことが示唆された。


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