| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-265  (Poster presentation)

林齢の異なるカラマツ・アカマツ人工林における森林の多面的機能の変化【A】
Variation of  forest multifunctionality along stand age of artificial forest in Japan【A】

*藤村泰詩, 吉田亘輝, 向井真那(山梨大学)
*Taishi FUJIMURA, Kouki YOSHIDA, Mana MUKAI(University of Yamanashi)

 日本で森林面積の約4割を占める人工林では林業従事者の減少や高齢化を一因とした老齢林化が問題視されている。そのため今後は人工林管理の省力化と森林の持つ多面的機能の維持を両立した管理方法を模索する必要がある。そこで、人工林の林齢に伴い森林の持つ多面的機能がどのように変化するのかを明らかにすることを目的として研究を行った。山梨県県有林のカラマツ人工林およびアカマツ人工林を対象に約30年から100年生の範囲で林齢の異なる7地点に20m×20mの調査区を設置し、毎木調査と生葉・リター・細根・土壌に関する物理化学的な測定を行った。測定した項目を生物多様性保全機能、水源涵養機能、物質生産機能、気候調節機能、土砂災害防止機能、物質循環機能、土壌分解特性、土壌栄養塩可給性の8つの個別機能に分類した。各測定値を人工林ごとに正規化し機能向上への影響を考慮して、機能の大小を示す個別機能値と多面的機能値を算出した。
 生物多様性保全機能はアカマツ人工林で林齢に沿った向上が見られた。物質生産機能は両人工林ともに林齢に沿って向上し、アカマツ人工林では早期に向上が鈍化していた。気候調節機能はアカマツ人工林において57年生で最大となり、その後低下に転じた。土砂災害防止機能はアカマツ人工林の老齢林で林齢に沿った向上が見られた。物質循環機能はカラマツ人工林で75年生まで向上しその後低下に転じた一方で、アカマツ人工林で林齢に沿って一貫した向上を示した。土壌栄養塩可給性はカラマツ人工林で60年生まで低下した後75年生以降で一定の高い値を示した一方で、アカマツ人工林で57年生以降に安定した高い値を示した。全てをまとめた多面的機能はカラマツ人工林で林齢に沿った緩やかな向上を示し、アカマツ人工林で57年生以降高い値で頭打ちとなった。植樹種ごとに林齢による多面的機能の変化には違いが見られ、それぞれ異なる管理方法が提案された。


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