| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-268  (Poster presentation)

安定同位体分析による落葉広葉樹林に生息する樹上活動性アリの食性解析【A】【O】
Stable isotope analysis to reveal feeding habits of arboreal ants in deciduous broad-leaved forest【A】【O】

*吉岡篤司, 吉田智弘, 梅澤有(東京農工大学)
*Atsushi YOSHIOKA, Tomohiro YOSHIDA, Yu UMEZAWA(Tokyo Univ. Agri. Tech.)

森林は、林冠、幹、下層植生、林床といった階層構造が発達しており、豊富な節足動物群集を支えている。一般的に、林冠は植物生存部に由来する生食食物網を、林床は枯死有機物に由来する腐食食物網を保持する。両食物網の構造と関係性を明らかにすることで、森林生態系と森林生物への理解が深まる。アリ類は森林生態系において、植食者の捕食や土壌環境の改変等の機能を持った重要な構成種である。これらの機能はアリ類の食性と結びついているため、アリ類の食性を調査することでアリが生態系中で果たす役割についてうかがい知ることができる。アリ類は森林の樹上と林床の両方に生息しているため、森林の階層構造に沿ってアリ類の食性を調査することで、樹上と林床の食物網にアリ類が果たす役割を明らかにすることができるかもしれない。
食物網を構成する生物のバルクの炭素安定同位体比(δ13C)はエサ資源の供給源を、窒素安定同位体比(δ15N)は対象生物の栄養段階を反映する。しかし、栄養段階の算出において用いられる一次生産者のδ15Nは時空間的な変動が大きく、また濃縮係数の変動も大きいことから、正確な栄養段階の算出は難しい。そこで一次生産者のδ15Nを用いずに、対象生物の分析のみで栄養段階を正確に算出することができるアミノ酸のδ15N分析を組み合わせた手法が近年用いられるようになってきた。
本研究では、落葉広葉樹林の樹上および林床に生息するアリ類の食性をバルクのδ13C・δ15N分析およびアミノ酸のδ15N分析を用いて明らかにすることを目的とした。樹上と林床のアリ類のバルクのδ13Cには有意差がなく、δ15Nには有意差があった。また、アミノ酸のδ15N分析により、樹上のアリ類は草食~雑食性で、林床のアリ類は肉食性であることがわかった。


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