| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-273  (Poster presentation)

脱窒過程を担う二種細菌共生系の実験的・数理的解析【A】【E】【O】
Mutualistic relationship between bacterial species in denitrification: experimental investigation and mathematical modeling【A】【E】【O】

*Toko HISANO(Tokyo Metropolitan Univ.), Koki SATO(Tokyo Metropolitan Univ.), Firnaaz AHAMED(Univ. of Nebraska-Lincoln), Hyun Seob SONG(Univ. of Nebraska-Lincoln), Shin HARUTA(Tokyo Metropolitan Univ.)

 窒素化合物を窒素ガスに還元する「脱窒」は地球の重要な窒素循環プロセスである。脱窒反応は段階的に進行し、各段階を担う細菌が見つかっている。土壌では、硝酸を還元し亜硝酸を生成する細菌が高頻度で検出される。生成する亜硝酸は生物毒性があるが、土壌での蓄積はほとんど見られず、他細菌によって除去されていると予想される。本研究では土壌から採取した亜硝酸を生成する細菌と亜硝酸を還元除去する細菌を混合培養し、脱窒過程を分業する二種細菌共生系を構築して、その協働作用を実験的・数理的に解析した。
 まず、硝酸を亜硝酸までしか還元できない細菌Sp.1と硝酸を還元できないが亜硝酸を窒素ガスまで還元できる細菌Sp.2を混合培養し、両者が硝酸培地で共増殖すること、亜硝酸が蓄積しないことを確認した。この時、Sp.1の生育は単独培養時に比べ促進されていた。この促進効果はSp.2が亜硝酸を除去したためと予想した。
 次にこれら細菌の動態を記述できる数理モデルを構築し、培養実験で予想した促進効果を検討した。各細菌の細胞増加量は、エネルギー獲得量及び栄養源の異化・同化分配の化学量論にもとづき、硝酸/亜硝酸の消費量から定義した。加えて、亜硝酸がある一定濃度以上に蓄積すると濃度依存的に細胞量の減少速度が上昇する死滅項をモデルに含めた。しかし、単独培養の実験データから推定したパラメータ条件では、混合培養時のSp.1の活発な増殖を説明できなかった。そこで、新たにSp.2の細胞量依存的にSp.1の増殖が促進されることを示す増殖促進項をモデルに追加したところ、実験データを再現できた。このことは、Sp.2によるSp.1の増殖促進は亜硝酸除去作用だけではないことを強く示唆しており、Sp.2はSp.1の増殖を促進することで亜硝酸を効果的に受容し、脱窒過程を進めていると考えられた。


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