| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-274  (Poster presentation)

冷温帯林の異なる斜面方位における土壌微生物群集とその呼吸特性【A】
Characterisitcs of soil microbial communities and their respiration on different slope aspects in a cool temperate forest.【A】

*付方正(岡山大学), 菱拓雄(九州大学), 兵藤不二夫(岡山大学)
*Housei FU(Okayama Univ.), Takuo HISHI(Kyushu Univ.), Fujio HYODO(Okayama Univ.)

土壌微生物は地球上の炭素・窒素循環において重要な役割を担い、数多くの生態系機能や安定性と深く関わっている。また、生息環境の違いや変動は土壌微生物の群集構造を変化させ、生態系機能に影響を与えると考えられている。地球規模での気候変動により土壌の乾燥は多くの地域で深刻化すると予想されているが、乾燥に対する土壌微生物群集の変化や機能の安定性の応答はよくわかっていない。そこで、本研究は非生物的環境が異なる土壌を用い、乾燥に対する土壌微生物群集の構造や土壌呼吸の安定性の応答とその両者の関係の解明を目的とした。対象土壌は斜面方位によって地温や土壌特性などが異なる九州大学北海道演習林内の南斜面と北斜面から採取した。土壌呼吸の安定性の評価指標として、圃場容水量50%に調整した土壌と乾燥によって圃場容水量を10%に乾燥させたもの、そしてそこから50%に戻した物の土壌呼吸量を用いて抵抗力と回復力を求めた。呼吸測定後、土壌を直ちに冷凍保存してから凍結乾燥し、リン脂質脂肪酸分析(PLFA)によって土壌微生物群集を評価した。PLFAの結果、総微生物バイオマスは北斜面の方が高く、 菌類/細菌比は南斜面の方が高かった。これは土壌微生物群集を決定する上での非生物的環境の重要性を示している。また、微生物バイオマスあたりの土壌呼吸量に斜面間で有意な差が見られ、南斜面の方が高かった。土壌呼吸の回復力については明瞭な傾向が見られなかったが、抵抗性については斜面間の違いが見られ、乾燥に対して南斜面の方が高い抵抗性を示した。さらに、PLFAの結果と土壌呼吸の安定性との間にいくつか有意な相関関係が見られた。これは、斜面方位による土壌微生物群集構造の違いは土壌呼吸の抵抗性に影響をもたらすことを示唆している。


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