| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-279 (Poster presentation)
倍数性を保ったまま放散的に種分化するには、生殖隔離の早期成立が必須となる。イカリソウ属は、属として若いがさまざまな環境に多様化が進んでおり、形態的な多様性も高い。さらに自然交雑も頻繁に報告されており、交配後生殖隔離は十分に発達していないと考えられる。本研究では四国周辺で様々な環境に点在する種を対象に、種の境界を維持する隔離機構として倍数性、内因的交配後生殖隔離、ニッチ分化についてフローサイトメトリー、正逆交配実験、ニッチモデリングから検証した。倍数性を検証した結果、国内に自生する種・亜種・変種は全て同倍数性であることが確認された。また、正逆交配実験の結果から、種間の結実率はやや低下する傾向があるものの、検証した全ての組み合わせで種間交配は可能であった。さらに、気象データを用いた生態学的ニッチモデリングによるニッチ同一性検定から、ニッチ分化が検出された。近縁種間では容易に交雑することから、内因的交配後隔離が生殖隔離機構として作用していないが、異なる環境へニッチを獲得することで種の分化を維持していることが示唆された。イカリソウ属においては、ニッチ獲得による生態学的生殖隔離が多様化に主に貢献していると推測される。