| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-281  (Poster presentation)

神奈川県伊勢原市で発掘された縄文時代後晩期の埋没林のDNA解析【A】【O】
DNA analysis of plant remains from a buried forest in the Late Jomon period excavated in Isehara City, Kanagawa Prefecture.【A】【O】

*木田翔太(東京農業大学)
*Shota KIDA(Tokyo Univ. of Agriculture)

丹沢山地の大山東麓から南北に延びる富岡丘陵の南西部、神奈川県伊勢原市西富岡および上粕屋に位置する西富岡・向畑遺跡は、2007年から発掘調査が行われ、2020年に標高約50 mの緩斜面で、縄文時代後晩期(約3100年前)の多数の大型植物遺体が出土する埋没林が発見された。古代の堆積物に含まれる枝葉などの植物遺体のほとんどは、形態や組織の保存状態が悪く、種同定が困難である。本埋没林は地すべり(斜面崩壊)により南西方向に押し倒された構造となっており、植物遺体には葉緑体の緑色が残るほど保存状態が良いものであるため、遺伝子による種同定が可能であると考えられた。そこで、本研究は発掘された植物遺体からDNAを抽出し、葉緑体DNAのtrnL領域およびrbcL領域の部分塩基配列を決定することで、縄文時代後晩期の低地林に生育していた植物の種同定を試みた。出土した植物遺体を含む土塊を冷凍保存したものを丁寧に洗浄し、DNA抽出の操作は無菌環境で行った。断片化が進んでいる古代植物遺体からDNAを抽出するため、SDSバッファーによる細胞溶解、クロロホルム精製、低速遠心によるシリカスピンカラム精製を組み合わせたWales & Kistler (2019)の手法を用いた。葉緑体DNAのtrnL intron領域及びrbcL領域の一部をPCR増幅し、ダイレクトシーケンスにより塩基配列を決定した結果、これまでにツヅラフジ科アオツヅラフジ、マメ科フジ属、バラ科サクラ属、タデ科イヌタデ属、シソ科クサギ属などの同定に成功した。これらの植物は埋没林に隣接する現存の落葉広葉樹二次林に生育しており、埋没林は現存林と類似する植物相を有していた可能性がある。今後さらに多くの植物遺体の同定を進め、本調査地における縄文時代後晩期の低地林がどのような植物で構成されていたのかを解明したい。


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