| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-283 (Poster presentation)
近年急速に生物多様性が減少するなかで、生物多様性が生態系機能にはたす役割を明らかにする研究が進められているが、生物群集が駆動する生態系機能は一つではなく、同時に複数の機能が駆動されている。生態系が複数の機能を同時に維持する能力は「多機能性」と呼ばれている。また、生物多様性の変化に伴い多機能性が変化することが知られ、その関係は「生物多様性-多機能性関係」と呼ばれる。最近の研究で、さらに、生物間の相互作用がこの関係に影響することが示されているが、既存のデータに基づいたメタ解析によるものが多く、実験的に相互作用の影響を調べたものは少ない。多機能性を調べる実験において、生態系の一部を隔離し生態系を再現した制御実験生態系の有用性が示されている。そこで、本研究では、生物多様性-多機能性関係に対する消費者の影響を実験的に調べることを課題として、制御実験生態系を確立し淡水生態系を再現し、消費者の存在や多様性と多機能性の関係を記載することを目的とする。今回、小規模の制御実験系であるマイクロコズムにおいて淡水生態系を再現し、実験を行なった。水生植物を4種(クロモ、コカナダモ、マツモ、フサモ)、消費者としてミジンコを用い、水草を1種のみ、2種混合、3種混合、それぞれミジンコありなし、と組み合わせを変えて120(繰り返し5)のマイクロコズムを作り、複数の生態系機能を測定した。また、多機能性の評価には、閾値アプローチを用いた。結果として、水草多様性による水草バイオマスの安定性への影響などが見られた。そして、閾値を変化させると、水草多様性や消費者による多機能性に対する効果が逆転したが、これは「よろず屋効果」という、多様な群集は多くの機能を低い閾値では維持することができるが、わずかな機能しか高い閾値以上に支えることができないという先行研究で見られる一般的なパターンと共通していた。