| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-287  (Poster presentation)

送粉者の応答多様性の「光と陰」:気象変動と作物フェノロジーによる影響【A】
"Light and Shadow" of response diversity: the effect of weather variation and crop phenology on pollination service【A】

*夏目佳枝, 宮下直(東京大学)
*Kae NATSUME, Tadashi MIYASHITA(Tokyo Univ.)

生物多様性が、環境変動に対して生態系機能を安定化し、高める仕組みの1つに「応答の多様性」(Response diversity: RD)が存在する。環境に対する応答が種間で異なることで、機能の非同調性が生じ、相補性が発揮されるというものである。RDは様々な生態系において研究されてきたが、重要となる条件が整理されていないことが課題である。
昆虫による送粉サービスは作物種の75%の生産に寄与しており、環境変動に対してレジリエンスを担保する必要がある。送粉昆虫は、気象変動に対してRDを持つことが知られているが、RDのサービス供給への効果は未解明である。我々の研究により、送粉者の気温に対するニッチ幅は、実際の気温変動幅に対して広いため、RDのサービス量に対する利益は限定的であることが示唆されている。さらに、気象に加えて、開花数や1日あたりの結実率最大値といった、植物が持つ特性も開花期中に時間変化する。本研究では、ソバの送粉サービスを題材に、送粉者の気象変動へのRD効果が、作物フェノロジーによってどのように改変されうるのかを、複数の時間スケールにまたがって検証する。
フェノロジーがRD効果に与える影響には「陰」と「光」の2つの側面が考えられる。陰の側面は、結実率最大値の低下と開花数の減少により、送粉サービス供給の機会が時間的に狭まることで、単年度ではRD効果が弱まるというものである。一方複数年度では、狭い時間幅のどんな気象下でもサービスを供給できる群集のほうがサービスは安定化する、すなわちRD効果は高まると考えられる。
今回は、実際の送粉者と気象のデータをもとに、様々な気象条件下での送粉サービスをシミュレーションする。RD効果は、個体数を変えずに、種間で応答を一様とした場合と無処理の場合でサービスを比較することで検出する。これを実測値をもとに推定したフェノロジーがある場合とない場合で比較し、上記の側面を定量的に明らかにする。


日本生態学会