| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-290  (Poster presentation)

密かに宝石サンゴとして混獲されていたサンゴ科サンゴの隠蔽系統の発見【A】【O】
Discovery of cryptic lineages in the Family Coralliidae (Octocorallia: Scleralcyonacea) harvested as precious corals【A】【O】

*Kenji TAKATA(The University of Tokyo), Takeshi HAYASHIBARA(FRA), Masanori NONAKA(Okinawa Churashima Foundation), Taisei KIKUCHI(The University of Tokyo), Akira IGUCHI(AIST), Nina YASUDA(The University of Tokyo)

漁業対象種における正確な種の認識は、保全や資源管理の最も基本的な情報である。八放サンゴ綱サンゴ科に属する数種は「宝石サンゴ」と呼ばれ、装飾品としての価値が高く、持続的な利用が重要であるが、我が国の生産・流通現場における種の認識は100年以上前から見直されていない。これには、宝石サンゴが高価であり十分な数の標本の入手が困難であることや、遺伝子解析の導入が遅れたことが指摘される。その一端には、八放サンゴ類特有のDNA修復酵素により、進化によって蓄積されてきたミトコンドリア遺伝子配列の違いを検出できないことなども理由として挙げられる。
そんな中、近年の調査船調査等により、代表的な宝石サンゴ類(アカサンゴ、シロサンゴ、モモイロサンゴ)とは外見的に区別しうる系統(サンゴ科sp.1)が発見された。一部は漁獲され、既知の種と混同されている可能性がある。本研究では、サンゴ科sp.1を対象に外部形態観察とゲノムワイドな遺伝子領域を用いた系統解析を行った。骨軸の色や枝ぶり、ポリプの付き方などからは、サンゴ科sp.1は他のサンゴ科サンゴとは異なる形態を持つことが認められた。さらにMIG-seq法を用いて核から得られた4,220個のSNPsによる系統解析は、形態学観察の結果と概ね一致し、サンゴ科sp.1は遺伝的にサンゴ科のPleurocorallium属のクレードに入ることが明らかになった。この他に、シロサンゴと分類された標本にも、新しく隠蔽的な系統を発見した。これらの隠蔽系統については、形態情報を整理し新種記載を進めていく予定である。今回の結果は、商業利用されている種群においても種という基本単位の認識が必ずしも十分に確立していないことを示し、その保全や持続的利用を計る上で、科学的な種の再整理の必要性が示唆された。


日本生態学会