| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-291  (Poster presentation)

大規模森林火災がマダガスカルの爬虫類の分布に与える影響の評価【A】【O】
Evaluation of the effect of large forest fire on distribution of reptiles in Madagascar【A】【O】

*伊與田翔太, 福山亮部(京都大学)
*Shouta IYODA, Ryobu FUKUYAMA(Kyoto Univ.)

森林環境の急速な減少は生物多様性の消失につながる重大な課題であり、森林火災はその要因の一つとされる。森林火災には生物多様性を生みだす基本的な生態学的プロセスとしての側面もあるが、人為的な要因等で火災の頻度や規模が増大すると、個体群の維持を脅かす現象にもなる。生物多様性の適切な保全のためには,火災に対し生物群集がどのように応答するのかを理解する必要がある。外温動物である爬虫類の体温は周辺の温度環境に強く影響を受けるため、温度環境の変化は体温調節を介して爬虫類の分布を規定しうる。大規模森林火災は林冠構造を消失させることで、周辺環境の温度が上昇するため、より高い体温を好む種ほど森林火災の影響を受けにくいことが予想される。本研究では,大規模森林火災から約1年経過した地域において,森林火災の程度と爬虫類各種の分布との関係性を明らかにすることを目的として調査を行った。調査地であるマダガスカルのアンカラファンツィカ国立公園内においては2021年に大規模森林火災が発生し、森林構造に大きな変化が生じた。火災被害の程度に合わせて3つのトランセクト(自然林、火災林と自然林の境界部(以下、林縁部)、火災林)を設定し、目視により爬虫類を記録した。調査で記録した個体は捕獲し、体温も計測した。本調査によって確認された種数は合計15種であった。発見された種数は林縁部で最も多く(11種)、次いで自然林(9種)、その後火災林(8種)であった。林縁部では開けた環境と閉鎖的 な環境が隣接しており、どちらの特性を好む種も生息可能であったため、高い種多様性が実現したと考えられた。予測とは異なり、トランセクト間で出現した種の活動時の体温の平均値に差はみられず、森林火災後の種の分布においては、活動時の体温よりも高温耐性や乾燥に対する耐性がより重要であることが示唆された。


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