| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-293  (Poster presentation)

細菌の生育環境中に存在する炭素源の種数が種間相互作用に与える影響【A】【E】【O】
Effects of carbon source diversity on interspecies interactions【A】【E】【O】

*小野大樹(東京大学), 津留三良(東京大学), 古澤力(東京大学, 理化学研究所)
*Hiroki ONO(University of Tokyo), Saburo TSURU(University of Tokyo), Chikara FURUSAWA(University of Tokyo, RIKEN)

 ほぼ全ての細菌は、複数種で共存して細菌群集を形成する。その細菌群集では、多くの種の間で、互いの生育を促進あるいは抑制する種間相互作用が生じている。細菌群集でどのような種間相互作用が生じているかは、種多様性をはじめとした細菌群集の特徴に影響する。このことから、細菌の種間相互作用はどのように決定されるのか、そのメカニズムについて研究が進められている。
 Keheらは、単一炭素源環境で自然界から単離した細菌の二種共培養を行い、そこに生じる種間相互作用を観察した (Kehe et al. Sci. Adv. 2021) 。その結果、複数炭素源環境下で種間相互作用を観察した他の先行研究と比較して、MutualismやCommensalismといった協力的な種間相互作用を多く観察した。この結果は、炭素源の種数が細菌の種間相互作用を決定する一つの要因となっていることを示唆している。しかしながら、炭素源の種数が異なる環境下で、同じ細菌種の組み合わせの種間相互作用を調べた研究例は少ない。そのため、細菌の種間相互作用と炭素源の種数の関係についてはほとんど明らかになっていない。
 そこで、本研究では細菌の種間相互作用と炭素源の種数の関係を調べることを目的に、与える炭素源の種数を様々に変化させた環境で細菌が形成する種間相互作用の観察を行った。その結果、与える炭素源の種数が少ないほど、MutualismやCommensalismといった協力的な種間相互作用の占める割合が増加する傾向を確認した。この結果は、細菌の種間相互作用を決定する要因として、生育環境における炭素源の種数が大きく影響し得ることを示している。本研究の成果は、細菌の種間相互作用が決定されるメカニズムの理解に寄与する。


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