| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-294  (Poster presentation)

冷温帯の河川源流域における河川水中の粒子付着性微生物と浮遊性微生物の多様性【A】【O】
Microbial diversity of particle-associated and free-living in stream water in a cool-temperate river headwaters.【A】【O】

*大上迪士(京都大学・農学研究科), 横部智浩(京都大学・FSERC), 松岡俊将(京都大学・FSERC), 舘野隆之輔(京都大学・FSERC)
*Tadashi OKAMI(Kyoto Univ. Agriculture), Tomohiro YOKOBE(Kyoto Univ. FSERC), Shunsuke MATSUOKA(Kyoto Univ. FSERC), Ryunosuke TATENO(Kyoto Univ. FSERC)

 河川水中の微生物群集(真菌と細菌)では、上流では陸域からの微生物の移流により多様性が高く、流下する過程で環境による選択を受けて多様性が減少すると考えられている。このように、上流から下流にかけての多様性の変動パターンが知られるが、上流での多様性の変動は明らかでない。特に、水中の細菌では粒子付着性(PA)と水中浮遊性(FL)で群集組成が異なるが、上流でPAとFLを区別した研究は少ない。本研究では、源流域における河川水中の微生物群集をPAとFLに区別し、それぞれの河川次数に沿った多様性の変動を調査した。京都府の冷温帯林に位置する源流域の29地点(最大520ha、河川次数は1~5)で、異なる季節(2022年10月、2023年5月、7月)に調査した。本研究では、河川の細菌群集を対象とした先行研究に倣い、河川水を3.0μm(PA)と0.22μm(FL)のフィルターで連続濾過することでPAとFLを区別したが、特に真菌においてはPAとFLの違いだけでなく、細胞サイズの違いも反映している。アンプリコンシーケンス解析の結果、ASVは、細菌のPAとFLでそれぞれ5967と7032、真菌のPAとFLでそれぞれ2987と4867が得られた。ASVの多くが1サンプルでのみ検出されたレア種であり、細菌のPAとFLでASV全体の51%、60%、真菌のPAとFLでASV全体の65%と68%を占めた。細菌ではPAとFLともに、レア種の数と相対優占度、総ASV数が河川次数とともに減少し、真菌ではレア種の数と相対優占度、総ASV数が増加する季節と減少する季節があった。以上から、細菌と真菌ともに、上流域での多様性の高さは、レア種の陸域からの移流によって維持されると考えられる。また、源流域においても、上流から下流にかけて種数が変化し、種数に影響を与える要因が真菌と細菌や、季節によって変化することが示唆された。


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