| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-295 (Poster presentation)
鳥類が経験する風環境は種間で異なっていると考えられる。飛行中に受ける突風などのリスクや、より狭い空間での方向転換など必要とされる機能は種間で異なっている。鳥類の手翼 (hand-wing) 形態は多様であり、鳥の生態や飛翔行動などと強く関連していると考えられる。鳥の翼は、工学的に改良された飛行機の翼と比較して、揚抗比などの効率が良くないにもかかわらず、自然の飛行体がもつ極めて顕著な特性が「飛翔安定性」である。先行研究により、鳥類の手翼形態は複雑な多層平面形状をもち、突風や乱流に対して能動的に翼を操作することなく、翼自体が持つ柔軟性により受動的に安定性を得ていることが示唆されている。さらに、手翼にならぶ初列風切羽の各羽根が個別に、かつ連動することで空力性能を向上しているという研究結果もある。したがって、手翼の形態が飛翔時の安定性にも寄与すると予想される。そこで、本研究では風洞実験を行い、3D軸力センサーでの力測定と粒子画像流速法(PIV)により、翼の機能解析を行った。まず、風環境の撹乱を模した風洞実験(撹乱風条件)において、一部の鳥種、翼の空力性能の向上が観察された。これを受けて、① このような性能の向上が種間での手翼形態の違いと対応するか。さらに、② 空力性能の向上はもたらした流体力学的な機構はなにか、の2つの課題に取り組んだ。その結果、まず力測定により、撹乱環境下で空力性能が向上するとき、その揚力・抗力の変化に二つのパタンがあることが明らかになった。さらにPIVの結果により、手翼における翼端スロットの有無によって、撹乱渦の利用方法が異なることがわかった。これらの結果は、撹乱環境下で鳥の手翼自体が持つ飛翔形質の特性として、撹乱渦の利用方法を初めて可視化、定量化したものである。