| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-299  (Poster presentation)

個体群動態が語る適応放散―ニューカレドニアのシソ科Oxera属における種間比較―【A】【O】
Demography reflecting adaptive radiation: A comparative study in the genus Oxera (Lamiaceae) in New Caledonia【A】【O】

*坂野慧悟(京都大学), 池田隆介(京都大学), 河合良弥(京都大学), 伊藤僚祐(京都大学), 野口英樹(情報システム研究機構), 寺内真(情報システム研究機構), GILDAS GÂTEBLÉ(Centre de Recherche PACA), 陶山佳久(東北大学), 井鷺裕司(京都大学)
*Keigo SAKANO(Kyoto University), Ryusuke IKEDA(Kyoto University), Ryoya KAWAI(Kyoto University), Ryosuke ITO(Kyoto University), Hideki NOGUCHI(ROIS), Makoto TERAUCHI(ROIS), GILDAS GÂTEBLÉ(Centre de Recherche PACA), Yoshihisa SUYAMA(Tohoku University), Yuji ISAGI(Kyoto University)

Oxera属はニューカレドニアに約500万年前に到達し、その後、35種に適応放散したシソ科の木本植物である。祖先形質推定からOxera属植物は乾燥適応系統と湿潤適応系統に分けられるが、ニューカレドニアで約300万年前から始まった乾燥化は、各系統の個体群動態に異なる影響を及ぼしたと考えられる。特に、集団サイズが増大すると、遺伝的変異が蓄積され、多様化を促進する要因となりうる。そこで本研究では、乾燥化がOxeraの過去の個体群動態や遺伝的多様性に与えた影響を明らかにするために、湿潤適応系統11種と乾燥適応系統5種を対象に全ゲノムリシーケンシングに基づく解析をおこなった。PSMC解析による過去1000万年の個体群動態の推定と、遺伝的多様性の指標としての個体内ヘテロ接合度の算出を行い、両系統間で比較した。その結果、湿潤適応系統ではニューカレドニアへ到達した直後から種間で共通して集団サイズが増加し、約300万年前からは急速に減少していた。他方、乾燥適応系統では到達直後は集団サイズの顕著な増加が見られず、約300万年前から集団サイズが増加し、約100万年前にピークに達していた。また、湿潤適応系統と比較してゲノムレベルで遺伝的多様性が有意に高かった。過去1000万年間の個体群動態は両系統で対照的であり、この傾向は乾燥化前後におけるニッチの増減を反映していると考えられる。また、乾燥適応系統は約100万年前以降に活発に種分化しているが、これは集団サイズがピークに達してからのことであるため、集団サイズの拡大に伴う遺伝的多様性の増大が乾燥適応系統の多様化を促進した一要因であると考えられる。乾燥適応系統はゲノムレベルで高い遺伝的多様性を保持していることから、今後も新しいニッチへ適応進化するポテンシャルを有している可能性がある。本研究により、乾燥化がOxeraの数百万年に及ぶ個体群動態やゲノム内の遺伝的多様性に影響を及ぼしたことが示唆された。


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