| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-304  (Poster presentation)

環境勾配における葉の鋸歯の適応的意義:キイチゴ属を用いた検証【A】
Adaptive significance of leaf shape along environmental gradients in Rubus【A】

*宮鼻美帆, 堀博樹, 三木直子, 三村真紀子(岡山大学)
*Miho MIYAHANA, Hiroki HORI, Naoko MIKI, Makiko MIMURA(Okayama Univ.)

葉縁に鋸歯をもつ木本植物の割合と生息地の年平均気温にみられる負の相関は大陸を超えて確認されているが、なぜ葉縁の形状と気候に関係が生じるのかについては明確な結論が出ていない。本研究では、鋸歯の大きさと生態学的形質(冬芽・光合成速度・葉強度)の関連に着目し、屋久島の標高に沿って分布するキイチゴ属の植物2種とその自然雑種集団を用いて検証した。屋久島では標高に沿って年平均気温が変化し、高地にいくとより鋸歯構造が発達した種が分布する。鋸歯構造によって冬芽に格納される葉の枚数が増えると考えられるが、対象種では冬芽内に格納された枚数と鋸歯構造との関係はなかった。光合成速度にも鋸歯構造との明瞭な関係性は見られなかった。葉強度は鋸歯がより発達した個体で高くなる傾向にあり、とくに葉の切れ込み(裂)構造の貢献が示唆された。本研究から、屋久島に分布するキイチゴ属では、鋸歯構造が複雑な葉では、質量や厚みの小さい葉でも高い葉強度を獲得することが明らかになった。


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