| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-305  (Poster presentation)

鳥類の多様な食性形質とクチバシの形状における遺伝的基盤【A】【O】
The genetic basis behind various dietary traits and beak shapes of birds【A】【O】

*荒井颯太(東北大学大学院)
*Sota ARAI(Tohoku Univ.)

鳥類は餌を採る道具としてクチバシを獲得した動物群である。鳥類のクチバシには形状の多様化が認められるが、一般的に肉食の鳥類は鈎状のクチバシを持ち、昆虫食の鳥類はピンセットのような細長いクチバシを持つ。このように鳥類のクチバシは利用する餌ニッチに適した形状に進化していったと考えられている。しかしながら、クチバシの発達に関わる遺伝的基盤が鳥類間で保存されているかどうかは知られていない。このことから、鳥類のクチバシデータの値と遺伝子の進化速度を系統樹上で計算することで、クチバシ形状の進化に寄与した遺伝子を検出できると考えた。一方餌を消化する道具として、先行研究では消化酵素や嗅覚受容体をコードする遺伝子に正の選択が検出されている(Wu et al. 2021)。配列の変異だけではなく、選択によって遺伝子コピー数の増減も生じることが先行研究で示唆されており、遺伝子コピー数の増減も鳥類の食性多様化に寄与したと考えることができる。本研究はクチバシの形状及び食性の進化それぞれに寄与した遺伝子を検出することを目的とし、食性収斂に関わる遺伝子コピー数変異の解析、クチバシ形状の収斂解析と正の自然選択を受けた遺伝子の探索を行った。NCBIデータベースからダウンロードした63種の鳥類に対して、論文(Tobias et al. 2022)から9つの食性データを取得し、各食性で特異的にコピー数が増減したファミリーを探索した。更に共通した食性の鳥類が持つクチバシ形状が収斂しているかどうかを調べるために、同論文から新陸鳥類5,859種のクチバシ形状データを取得し収斂解析を行った。本発表では、こうして得られた鳥類のPCスコアを用いて、種の系統樹から遺伝子の進化速度を計算し、検出された加速進化した遺伝子について議論する。


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