| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-311  (Poster presentation)

ハチジョウノコギリクワガタは何者なのか?~ゲノム生態学的手法によるアプローチ~【A】【O】
What is the Hachijo stag beetle? : Phylogenetic and ecological studies of Prosopocoils Hachijoensis【A】【O】

*岸野紘大, ​若宮健, 井戸川直人, 岡田泰和(東京都立大学 理)
*Kodai KISHINO, Takeshi WAKAMIYA, Naoto IDOGAWA, Yasukazu OKADA(Tokyo Metropolitan University)

性選択により進化した誇張形質は、進化的に不安定であると考えられており、生存に不可欠でないため頻繁に獲得されたり失われたりする。グループ内で形状や大きさが非常に多様化しているクワガタムシ類の大アゴ形質は、誇張形質の進化プロセスを明らかにする上で優れている。
本研究では、ノコギリクワガタ属(Prosopocoilus属)の中で大アゴの大きさが異なる、本土ノコギリ(P. inclinatus)と八丈島固有種であるハチジョウノコギリ(P. hachijoensis)の2種に注目し、両種の生態学的差異と遺伝的関係を調査した。
はじめに、両種の形態比較から、ハチノコは本土ノコに比べて複数形質(大アゴ、脚、翅)において相対的にサイズが小さいことが示された。飢餓条件下での生存時間の比較により、ハチノコの雌が特に高い飢餓耐性を持つことが明らかになった。
さらに我々はノコギリクワガタ属の遺伝構造解析のため、本土ノコの全ゲノムドラフト配列の構築に加えて、全国から採集した計24個体の全ゲノムリシーケンスを実施した。全ミトコンドリア配列を用いた分子系統解析の結果では、ハチノコと本土ノコが明確に異なるクレードに分かれた。全ゲノム情報に基づくPCAの結果とAdmixture解析も同様の結果を支持した。また、本発表では、ゲノム中のヘテロ接合パターンから推定された過去の個体群サイズ動態および、種間のFst解析によって得られた、雄の大アゴの大きさを制御している可能性のある候補遺伝子群についても紹介する。
本研究からハチジョウノコギリは資源の乏しい島嶼環境に適応する過程で、オスの大アゴサイズ、飛翔能力を代償に、メスの飢餓耐性を向上させる独自の進化を遂げたノコギリクワガタ個体群であることが示唆された。


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