| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-316  (Poster presentation)

佐渡島モリアオガエルのニッチ拡大に基づく形態およびライフサイクルの変化とその要因【A】【O】
Morphological and life cycle changes and their factors based on niche expansion of Zhangixalus arboreus in Sado Island【A】【O】

*藤田健(新潟大学), 田口裕哉(東北大学), 澤田聖人(筑波大学), 陶山佳久(東北大学), 杉山稔恵(新潟大学), 阿部晴恵(新潟大学)
*Takeshi FUJITA(Niigata Univ.), Hiroya TAGUCHI(Tohoku Univ.), Kiyoto SAWADA(Tsukuba Univ.), Yoshihisa SUYAMA(Tohoku Univ.), Toshie SUGIYAMA(Niigata Univ.), Harue ABE(Niigata Univ.)

新たな環境への適応に伴う形質の変化と遺伝的分化の程度を明らかにすることは、進化学的に重要な知見を提供する。モリアオガエルは樹上性のカエル類であるが、佐渡島では森林だけだはなく平野部の水田地帯(国仲平野)においても繫殖を行う様子が確認されており、その主要な生息地の一つは水田地帯であるとされる。この水田地帯の集団は一般的な生息地とされる山地の森林集団(大佐渡山地、小佐渡山地)からは市街地の存在により地理的に隔離されているため、遺伝子流動が妨げられることで集団間は遺伝的に分化している可能性がある。そこで本研究では、モリアオガエルが平野部の⽔⽥地帯へとニッチを拡⼤していると仮定し、平野部の水田地帯に棲息する集団と山地の森林に棲息する集団との遺伝的分化の程度とその表現型形質の変化を調べ、それらの進化学的実態を明らかにすることを目的とした。
その結果、以下のことが明らかとなった。1)MIG-seq法により得られた4,086SNPsについてAdmixture解析を行った結果、佐渡島内には2つのクラスターがあることが支持されたが、それらの遺伝的分化程度は低かった。遺伝的構造を景観構造に重ねてマッピングした結果、個体群の遺伝的構造は森林から離れた水田地帯で変化する傾向がみられた。2)表現型形質として、体サイズ、生活史形質について調べた結果、平野部に棲息する集団では、山地の集団よりも変態時期が早く、雌雄の変態から性成熟までの期間の成長率が低く、雄の体サイズが小さいことが示唆された。GLMMによるモデル選択では、水田被覆率の高さが成体の体サイズの低下をもっともよく説明した。また、水田地帯は棲息の確認されているカエル類の種数が多く、調査より6~7月に高温環境となることが示された。以上より、平野部の水田地帯では、他種とのニッチの競争が激しく、夏季に高温となることで、変態から性成熟までの期間における成長率が低下し、体サイズにも影響していると考えられた。


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