| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-318  (Poster presentation)

倍数性種内変異をもつハイイロヒョウタンゾウムシにおける低温惹起性の同質多倍体創出【A】【O】
Cold-induced autopolyploidization in the weevil Catapionus nebulosus: implications for the intraspecific ploidy variation【A】【O】

*村上翔大(東京大学), 奥崎穣(大阪公立大), 土畑重人(東京大学)
*Shota MURAKAMI(Tokyo Univ.), Yutaka OKUZAKI(Osaka Metropolitan Univ.), Shigeto DOBATA(Tokyo Univ.)

 動物から植物にいたる広い分類群において,2倍体由来の配偶子に低温や圧力などの物理的ストレスを与えることで,多倍体個体が形成される.多倍体は高緯度・高標高・乾燥などの過酷な環境に偏った分布を示すことから,多倍体形成における環境ストレスの寄与が疑われている.日本産ハイイロヒョウタンゾウムシ(Catapionus nebulosus)は,昆虫で例外的に顕著な倍数性変異を示す1種であり,分布域北部に単為生殖する多倍体(4・5倍体)が,南部に有性生殖する2倍体が認められる.本研究では,環境ストレスによる多倍体形成を実証することを目的として,産下直後の低温が胚の倍数性・発生可能性・発生安定性に与える影響を調べた.
 2倍体メス(交尾済)と多倍体メスを用意し,産下直後の卵を常温(20℃)または低温(4℃)に曝露した後に常温で飼育し,処理後10日までの孵化率を記録した.また,孵化幼虫の核をDAPI染色し,フローサイトメーターによって倍数性を推定した.その結果,対照群と比較して,低温曝露によって孵化率は低下したが,2倍体メスでは32.4%,多倍体メスでは49.7%の幼虫が孵化した.多くの幼虫は親と同じ倍数性を示したが,2倍体メスでは孵化幼虫の12.5%が3~5倍体と推定された.上記に加えて,低温が左右対称性のゆらぎに与える影響を調べるため,低温曝露を通して得られた孵化幼虫の頭殻幅の左右均等性と複眼の相対位置を定量する.形態測定の結果を踏まえて,異なる倍数性の個体の発生安定性について議論する.


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