| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-319  (Poster presentation)

トゲウオの淡水適応能力の分子遺伝機構【A】【O】
Molecular genetic mechanisms of freshwater tolerance in sticklebacks【A】【O】

*石田麻佑子, 石川麻乃(東京大学)
*Mayuko ISHIDA, Asano ISHIKAWA(University of Tokyo)

生物の新しい環境への進出は、種分化や形質の爆発的な多様化を促進する。新規環境への進出能力は生物種によって異なることが知られているが、この違いを生む生理機構、遺伝基盤の多くは未解明である。これを明らかにするために、本研究では淡水進出能力の異なるトゲウオ近縁種に着目する。トゲウオ科イトヨは海から淡水環境に何度も進出し、多様な集団に分岐している一方、約68万年前にイトヨと分岐したニホンイトヨは淡水環境に進出できていない。淡水と海水の環境の違いの一つは浸透圧である。魚類は鰓でのイオン輸送や腎臓での水分バランスの調節など様々な機序で浸透圧を調節する。この浸透圧調節にはホルモンが関与しており、低浸透圧ではプロラクチンが血漿中ナトリウムイオン濃度の上昇や浸透圧調節臓器の透過性の減少を担うことが知られる。これまでの私たちの研究から、イトヨとニホンイトヨでは、成魚において淡水耐性とプロラクチン発現量に違いがあることが分かってきた。しかし、稚魚期での淡水耐性やプロラクチン発現量、また、この違いを生むゲノム領域、遺伝的変異は同定されていない。そこで本研究では淡水進出能力の異なるトゲウオ近縁種の淡水適応能力に着目し、この違いを生む分子遺伝機構を明らかにする。まず、6か月齢のイトヨとニホンイトヨをコントロール条件(16°C、長日条件、10%海水濃度)と24時間の淡水曝露条件におき、プロラクチンの発現量を比較した。次に、血漿中のナトリウムイオン濃度を比較し、プロラクチン発現量と血漿中ナトリウムイオン濃度の相関関係を調べた。本発表ではこれらの結果から種間や環境条件、性別との関連性を議論する。今後は淡水耐性に関与する他の遺伝子の発現量を比較するほか、アレル特異的発現解析やQTL解析、プロラクチン遺伝子をノックアウトしたイトヨを用いて機能解析を行い、淡水耐性に関与する分子遺伝機構を解明する。


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