| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-324  (Poster presentation)

土壌中の根粒菌のミヤコグサとの共生能力と分布【A】【O】
Distribution of Lotus japonicus-associated rhizobia in soil and their qualities of symbiosis【A】【O】

*太田千晴(東京大学), 番場大(東北大学), 佐藤修正(東北大学), 土松隆志(東京大学)
*Chiharu OTA(The University of Tokyo), Masaru BAMBA(Tohoku University), Shusei SATO(Tohoku University), Takashi TSUCHIMATSU(The University of Tokyo)

マメ科植物と根粒菌との間には、根粒菌がマメ科植物の根粒内で窒素固定を行い植物に窒素固定産物を与える一方、マメ科植物が根粒菌に光合成産物を与え根粒内で増殖させるという相利共生関係が知られている。この共生関係には宿主特異性があり、ある根粒菌が共生可能なマメ科植物の種はある程度決まっている上、共生可能な根粒菌の中でも宿主の成長を促進するパフォーマンスには変異があることが報告されてきた。根粒内で増殖した根粒菌は土壌中に再び放出されるため、マメ科植物と根粒菌との相互作用にみられる特異性やパフォーマンスの変異により、土壌中の微生物群集の組成はフィードバックを受けて局所集団ごとに変化していく可能性がある。しかしながら、土壌中の根粒菌の存在量、組成や共生のパフォーマンスを調査した研究はこれまで限られていた。そこで本研究では、日本に広く分布するマメ科のモデル植物ミヤコグサを対象に、その生育地周辺の土壌中の共生根粒菌の分布や植物の成長に与えるパフォーマンスの違いを定量することを目的とした。土壌サンプルの16S rRNAアンプリコンシーケンス解析の結果、ミヤコグサに共生するMesorhizobium属根粒菌の存在量は数十センチ〜数メートル程度のスケールでも大きく変化することが明らかになった。さらに、土壌から抽出した菌叢のミヤコグサへの接種実験の結果、Mesorhizobium属の存在量が多い場所ほど、またミヤコグサが生育している場所の方が、菌叢がミヤコグサの成長量に正の効果を与えることが分かった。これらの結果は、根粒菌の放出を介したフィードバックによりミヤコグサは自身の成長に適したMesorhizobium属を土壌中に増加させていることを示唆する。今後、ショットガンメタゲノム解析等により土壌根粒菌群集における共生機能獲得の実態が明らかになることが期待される。


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