| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-331 (Poster presentation)
陸上性ミミズ類は土壌生態系において大きな影響を及ぼすがその繁殖方式については不明点が多い。繁殖形態についてミミズ類は同時的雌雄同体であることが知られている。同時的雌雄同体は成体が雌雄両方の生殖器官をもつが一般的に2個体で交尾の繁殖形態をとる。しかしツリミミズ科のシマミミズ(Eisenia fetida)とアンドレツリミミズ(E. andrei)は近縁種でありどちらも交尾だけでなく自家受精を行うことが報告されている。またこれらの2種の間には雑種が生じることが実験条件下で確認されている。本研究では2種が雌雄同体ではあまり観察されていない自家受精を行う要因を数理モデルとそれに基づくシミュレーションによって考察した。数理モデルは世代ごとの差分方程式を作成し、シミュレーションは差分方程式をもとにibmも用いた。実験条件では自家受精よりも種内交尾が産卵数が多く、交雑による産卵数は最も少ない、また交雑によって生まれた個体は胎生を有しているが他個体に比べて低いということが先行研究によってわかっている。これらをもとに種内交尾と種間交尾、自家受精の繁殖成績を設定すると基本的には種内交尾を多く行い、自家受精は行わないような戦略が最適戦略となることが推定された。しかしながら2種の生息地が接しており交雑が生じるような場合には交雑を避けるために自家受精を行う戦略が最適になる可能性が示された。繁殖干渉を避けるために自家受精を行うということが考えられる。ミミズ以外での雌雄同体においても自家受精が戦略的に成立するかは近縁種の存在と交雑がどれほど頻繁に行われるのかが重要であることが考えられる。