| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-333 (Poster presentation)
生物多様性保全を目的とする外来種管理では,限られた予算や資源で管理目標を達成するために効率的な捕獲戦略が求められている.日本の外来中型哺乳類管理では,非対象種の混獲回避や生体捕獲の配慮などからかごわなが多く使用されるが,捕獲効率の低さが指摘されている.しかし,かごわな捕獲の成否要因は分析されておらず,捕獲改善策に向けた知見が不足している.
本研究では,かごわな捕獲改善策の提案を行うことを目的に,カメラトラップでかごわなを撮影し,捕獲対象種のわなへの反応を分析した.伊豆諸島御蔵島でのネコ対策を対象とし,2021~2022年度冬期の集中捕獲時に撮影した動画データを用いた.個体は体毛の模様で識別し,行動を分析した.捕獲日及び捕獲場所,模様から捕獲個体と一致した個体は捕獲時の計測データから性齢及び肥満度指標,捕獲されなかった個体は外見的特徴から性齢の情報を収集した.捕獲されるまでの時系列を,(1)わなとの遭遇,(2)わなへの関心度,(3)捕獲成立,に分けて各段階の要因分析を行った.あわせて混獲の影響も分析した.
その結果,個体識別できたネコでみても,捕獲されない個体も多かった. (1)わなとの遭遇は,全体としてオスの撮影頻度が高く,メスの撮影頻度は低標高域の林内で高い傾向にあった.(2)わなへの関心度は,メス及び幼獣が高い傾向にあった.(3)捕獲成立は,メスが捕獲される傾向にあった.1~2月は捕獲個体のうち痩せた個体が多く,他種(外来ネズミ類)の混獲も少なかった.
以上から御蔵島のネコ捕獲改善策として,メスのわなとの遭遇を増加させるためには低標高域の林内に捕獲努力量を増加させること,誘引餌の効果が大きいと推測される痩せた個体が増加し,混獲妨害が減少する1~2月に捕獲努力を集中させることを提案した.発表では,本提案に基づいて実施中である2023年度捕獲における検証結果についても報告する.