| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-336 (Poster presentation)
熱帯を起源とする外来草本コセンダングサBidens pilosa var. pilosaとタチアワユキセンダングサBidens pilosa var. radiataは、変種という近縁関係にありながら日本国内における侵入範囲が明確に異なっており、コセンダングサが鹿児島県から栃木県まで侵入しているのに対して、タチアワユキセンダングサの侵入範囲は西南諸島から鹿児島県の南部までに限定されている。このような侵入範囲の差が生じている要因を解明するために、Bidens pilosa 2変種の発芽温度特性・実生の耐寒性・繁殖特性に関して研究を行った。発芽温度特性に関しては、2変種ともに休眠性が無く、12-32 ℃の範囲で発芽した。また、実生の耐寒性に関しては、2変種ともに-1 ℃の低温条件下でも生存可能であり、耐寒性の獲得速度にも変種間での差は確認されなかった。繁殖特性に関しては、タチアワユキセンダングサが未侵入の広島県で2変種の栽培実験を行ったところ、2変種ともに発芽能力を有する種子を生産した。また、10月から12月にかけての頭花当たりの結実数には2変種ともに変化が見られなかったことから、繁殖期間の温度の影響は確認されなかった。以上のことから、Bidens pilosa 2変種の侵入範囲の差が生じている要因は、温度では説明できないことが明らかになった。一方で、栽培実験と合わせて行ったポリネーター排除実験によって、コセンダングサが自家和合性であるのに対して、タチアワユキセンダングサは自家不和合性の傾向が強いことが確認された。一般的に、自家和合性の外来植物は自家不和合性の外来植物よりも侵入拡大において有利であるとされており、Bidens pilosa 2変種においても繁殖様式の差が侵入範囲の差に繋がったと考えられる。なお、コセンダングサとタチアワユキセンダングサのポリネーターには高い類似性が見られ、頭花当たりの訪花頻度にも2変種間で差が無かったことから、今後タチアワユキセンダングサの侵入範囲がコセンダングサと同程度まで拡大する可能性が高い。