| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-343 (Poster presentation)
アズマヒキガエルBufo japonicus formosusは, 国内外来種として伊豆諸島に侵入している. しかし, 伊豆諸島における本種の生態は十分に把握されていない. 本研究調査地である三宅島は, 2000年の大噴火により本種の主な生息地である森林が破壊された. 噴火後11年に行われた長谷川(2013)の調査では, 本種の分布域は島の一部に限られていた. しかし, 樹木の回復が顕著となった噴火後12年以降は詳細な調査は行われていない. そこで, 本研究では三宅島において国内外来種アズマヒキガエルが噴火後の植生回復に伴いどのように個体群を形成してきたのかを明らかにするために, 噴火後20年以降の本種の分布様式, また, 基礎的知見として単位時間あたりの発見個体数と体サイズを調査した. 三宅島内の本種の分布を把握するために, 夜間ルートセンサスを実施し, GPSで位置情報を記録した. センサスは2022年5月と10月, 2023年6月と10月に実施した. 高標高域の調査は11月の昼間に行った。分布に影響する環境要因を明らかにするために, 標高, 植生, 傾斜, 断面曲率, 平面曲率, 累積流量, 海岸からの距離, 池からの距離を説明変数とし, MaxEntにより種分布モデルを構築した. さらに, 本種の主要な繁殖場と考えられる三宅島南部にある大路池を一周する道を10分間徒歩で捜索し, カウンターで個体数を数え, 体長等を計測した.調査の結果, 1495地点で本種が確認された. MaxEnt解析の結果, 標高が本種の分布を予測する上で最も重要な変数として選択され, 標高が高くなるほど在確率が低くなる傾向が見られた. 植生については, 火山噴火後の植生であるハチジョウススキ群落やハチジョウイタドリ群落は森林と比較して在確率が小さくなっており, 分布予測図では火口付近の在確率が著しく小さくなっていた. 捕獲調査では10分間で538匹が確認され, 高密度で生息していることが示唆された. また, 大路池個体群の体サイズは, オスが89.50±9.82, メスが81.86±11.86とアズマヒキガエルとしては小型であった.