| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-345 (Poster presentation)
ウシガエルLithobates catesbeianaは世界各地に導入されており、侵略的外来種として問題になっている。本種の食性や産卵スケジュールを把握することは、生態系への影響を理解し、効率的な駆除を行うために重要となる。しかし日本の中部地域では、これらに関する情報はほとんどない。そこで本研究では、愛知県名古屋市(猪高緑地)内の水域において、 6月から11月に(主に2019~22年)駆除され、冷凍保存されていた159個体の解剖を行い、胃内から得られた餌動物について、認識できる形態に基づいて同定した。そして、未消化の部分を楕円体 に近似して体積を算出した。また、メスについては卵の色調や形状から卵巣の成熟度を判定し、産卵時期を推定した。
その結果、本種の餌は、体積では9割 (合計約540㎖中、490㎖)、個体数において7割以上がアメリカザリガニであった。また、水面に落下したと思われる昆虫類や、ムカデ、ハサミムシといった主に地上を徘徊する動物も捕食されていた。頭胴長が10cm以上の個体は、10cmより小さい個体と比較して、ザリガニを有意に多く捕食していた。卵を持ったメスは6月、7月と9月に捕獲されていた。6月、7月に捕獲されたものでは、大型のメスはすべて、黒色あるいは分極した成熟卵を持っていた。つまり、これらの個体は、捕獲されるまでに産卵していない可能性が高い。同時期に黄色の未成熟卵を持っているメスもみられたが、比較的小型の個体ばかりであった。したがって、これらの個体は性成熟前であると思われる。その一方で、9月には少数ながら、成熟した卵を持っていない 、産卵後と思われる大型のメスも捕獲されたことから、本調査地におけるウシガエルの産卵は、8月以降と予測される。したがって、産卵を未然に防ぐことのできる7月以前に捕獲を行うことが、本種の駆除において効果的であると考えられる。