| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-346 (Poster presentation)
天竜川上流地域の河川敷ではシジミチョウ科で準絶滅危惧種(環境省版:県版では留意種)のクロツバメシジミ東日本亜種の生息が、また食草で準絶滅危惧種(環境省版・県版)のツメレンゲの生育も確認されている。先行研究(坪井・大窪2008、 中原・大窪2018・2019・2020)において、本ハビタットでは特定外来生物のオオキンケイギクや外来木本・ハリエンジュの優占度の増加は両種の関係性の保全に負の影響を与えることが指摘された。そこで本研究の目的は15年経過したハビタットにおける両個体群および周辺群落、立地環境の現状を把握し、経年変化を考察することから両種の関係性の保全を検討することとした。
調査地は先行研究と同様の場所にルートA~C・Fの計4ルート設置した。各調査ルート上においてルートセンサス調査とツメレンゲ、オオキンケイギク、ハリエンジュ、クズの分布調査を実施した。また各ルート上に25m×25mのメッシュを計177メッシュ設置し、卵・幼虫・蛹の生息状況調査、ツメレンゲのシュート数調査を実施した。各調査メッシュ上に2m×2mの方形区を設置し、植生調査と立地環境条件調査を実施した。立地環境条件調査は立地条件(石積堤防・堤防草地)、相対光量子束密度、石・コンクリート被度、コケ類被度、土性区分を記録し、石積堤防である調査プロットでは土壌深度を測定した。
クロツバメシジミ東日本亜種の成虫は計157個体、卵・幼虫・蛹は7月に42メッシュ、9月には40メッシュにおいて確認された。先行研究では全ルートで確認されたが、本調査ではルートC・Fにおいてクロツバメシジミ東日本亜種は確認されなかった。分布および群落調査の結果、ツメレンゲはオオキンケイギクだけでなくハリエンジュやクズによる被陰の影響を受けることが明らかになったことから、ハビタットの保全には競合種の適切な管理が重要であると考えられる。