| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-348 (Poster presentation)
チャマダラセセリは環境省版RDLで絶滅危惧ⅠB類(EN)に指定されており、特
に危急性が高い草原性チョウ類である。本種は本州中部で年2化生である。本種は食草をバ
ラ科キジムシロ属のミツバツチグリ等とし、これらが生育し、かつ植被率の極めて低い草
地環境を産卵場所として強く選好する(福田1984)。新井ら(2016)は岩手県での実験で
繁殖地であるシバ群落の保全を行うためには、高頻度の刈り取りなど継続的な攪乱をもた
らす植生管理の必要性を提言した。本研究では本州中部の岐阜県における本種の保全を目
的とした植生管理手法を検討するため、繁殖地である畦畔草地群落で刈り取り実験を行い
、その効果を明らかにすることとした。
調査地は畦畔草地の法面に2021年6月に32プロットが設定された。2021年夏季および2022
年春季、2023年両季に植物社会学的な手法に基づく植生調査と立地環境調査が実施された
。その結果、全プロットは7群落型に分類された。2022年7月に、群落型ごとに刈り取り区
と無処理区を同反復のプロット数で設定し実験が開始された。刈り取り処理区ではミツバ
ツチグリ以外の植物種を全て刈り取った。2022年と2023年の春型繁殖期に全プロットで卵
と幼虫の個数をカウントした。
本調査地ではシバよりも大型なイネ科のススキが優占する群落であったが、オオマツヨイ
グサなどの外来種や畑地雑草、マント群落の生育種なども確認された。刈り取り区では処
理後に優占種のススキやヨモギなどの多年生草本が減少し、1年生草本が増加した。また
同区ではミツバツチグリなどの低茎草本が増加した。刈り取り区の相対光量子束密度は無
処理区よりも有意に高かった(クラスカル-ウォリス検定:p<001)。一部の刈り取り区の産卵数は無処理区よりも多い傾向にあった。刈り取り処理は繁殖地としての保全に一定の効果があると考えられた。