| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-351  (Poster presentation)

ナカジマツブゲンゴロウの鞘翅色彩変異と発育時の温度が与える影響【A】【O】
Elytra color pattern variation and the effect of temperature during development in the diving beetle, Laccophilus nakajimai【A】【O】

*内山龍人(筑波大学), 谷野彩奈(筑波大学), 渡部晃平(石川県ふれあい昆虫館), 佐藤幸恵(筑波大学)
*Ryuto UCHIYAMA(University of Tsukuba), Ayana TANINO(University of Tsukuba), Kohei WATANABE(Ishikawa Insect Museum), Yukie SATO(University of Tsukuba)

温度は、変温動物である昆虫の適応度に大きな影響を及ぼすため、地球温暖化が昆虫に与える影響が懸念されている。既に多くの昆虫では、温暖化への反応として分布域の北上や、高標高域へのシフトが報告されている。一方、地理的、生態的、生理的要因により移動分散が限られている種はこうした反応がとれないため、温暖化の影響を強く受け、絶滅する恐れがある。ナカジマツブゲンゴロウLaccophilus nakajimaiは体長約4mmの小さなゲンゴロウであり、環境省レッドリストで絶滅危惧II類に選定されている希少種である。与那国島の固有種故に、温暖化に対して逃げ場をもたないことから、保全する上で温暖化が与える影響の調査が求められている。また本種では、ゲンゴロウの中でも多様な鞘翅の色彩・模様の変異がみられる。いくつかの昆虫種では、色の暗い個体ほど太陽熱の吸収効率が高く冷涼な気候に適応的など、色彩・模様の変異と気候適応との関連性が報告されており、本種においても温暖化が色彩・模様を介して適応度に影響を及ぼす可能性がある。そこで本研究では、本種を対象に、室内実験で発育時の温度と羽化後の鞘翅の色彩・模様との関係性を調査し、野外調査により鞘翅の模様と生息環境の関係性を調査した。その結果、22℃、26℃、30℃の3つの温度条件下で幼虫を育成したところ、羽化後の鞘翅の色彩は30℃発育集団で最も暗く、模様も発育集団間で有意に異なっていた。また、野外調査では鞘翅の模様と生息地の水深に関係性がみられた。これらのことから、温暖化に伴い発育時の温度が上昇した場合、成虫の色彩・模様が変化し、生息地利用に影響が及ぶと示唆された。しかし、本種では高温下で色彩の暗化が生じており、熱効率からの予想とは真逆の傾向にある。そのため、今後は本種の色彩・模様の適応的意義を明らかにし、本研究結果と合わせて温暖化が鞘翅の色彩・模様の変化を介して適応度に及ぼす影響を検討したい。


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