| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-358  (Poster presentation)

上高地徳沢地区におけるニホンジカの利用実態【A】【O】
Utilization of sika deer (Cervus nippon) in Tokusawa area, Kamikochi【A】【O】

*藍原有紀乃, 瀧井暁子, 泉山茂之(信州大学)
*Yukino AIHARA, Akiko TAKII, Shigeyuki IZUMIYAMA(Shinshu Univ.)

近年、長野県ではニホンジカの分布域が拡大傾向にあり、上高地では2014年にオスジカが初めて確認され、以降毎年ニホンジカの利用が確認されている。上高地では、大正池~小梨平において採食植物種の調査が行われているが、小梨平より北部におけるニホンジカの利用状況は明らかになっていない。そこで、今回は上高地を代表するニリンソウの景観を持つ徳沢地域における、ニホンジカの利用状況を明らかにすることを目的としてセンサーカメラ調査、植生調査および食痕調査を行った。調査は徳沢周辺の3地点で行い、センサーカメラを各地点に2台ずつ設置した。月に一回SDカードの交換とカメラチェックを行った。植生調査は各地点に50m×10mのコドラードを設定し、5m以上の樹木について樹種・株数・胸高直径を記録し、5m未満の樹木についてはさらに目測による樹高も記録した。食痕調査は各地点に設定した50mライン上に2m×2mコドラードを25プロット設定し、全体の被度、全生育植物種と食痕のあった植物種および食痕数、種ごとの食痕レベルを記録した。センサーカメラ調査は2023年6~11月、植生調査は8月、食痕調査は2023年6~10月の各月に実施した。センサーカメラ調査の結果、ニホンジカは6月から11月まで確認され撮影頭数はニホンカモシカよりも多かった。撮影頭数は7月に最も多く、6月に当歳仔を確認した。各調査地において50種以上の植物種を確認した。調査地点により食痕数や食痕レベルに違いがみられたが、特に食痕数の多かった植物種はウワバミソウであった。食痕レベルはツリバナ・カントウマユミで高く、矮小化が見られた。本研究で6月に当歳仔が撮影されたため、上高地がすでに出産場所として利用されていることが示唆され、食痕調査により夏季から秋季にかけてニホンジカが採食場所として利用していることが明らかとなった。経年的な利用の変化を明らかにするため、次年度も継続調査を行う予定である。


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